実写版『進撃の巨人』後篇が意外と悪くない…前編に伏線が (2/2ページ)

デイリーニュースオンライン

 個人的にとても良かったと思うのが、エレン巨人とシキシマ巨人によるプロレスシーンで、ここはBGMのそれっぽさも手伝って完全に怪獣映画になっていました。樋口監督の得意なフィールドで勝負しており、自分の武器を活かそうとする意志を感じます。また、実写版の中で一応の謎解きもなされており、原作をベースにしながらも自分たちならではの作品を作ろうという気概も感じました。すると、必然的に原作からは乖離してしまうのですが、それでも単純な「巨人vs人間」の構図にせず、敵としての人間の存在を強調した辺りには原作へのリスペクトも感じます。原作のコアなところのニュアンスを汲み取ろうという意志はちゃんと感じました。

 一方で、どうかと思う点は後篇にも色々とあって、シキシマさんは人間の時はあんなに強かったのに巨人化したら突然隙だらけになってみんなにザクザク斬られるし、士官の巨人は適当に他の箇所に穴を開けるだけで主人公たちの作戦は崩壊するのに何故か爆弾に固執するし、政府と反政府テロリストが勝手に共倒れして棚からぼた餅的に主人公たちが生き残るラストも肩透かし感があります。シキシマさんはせっかくエレンの兄なのだから(たぶん)、敵対の中にも仄かな家族愛とか匂わせれば、「エレンを守った」感じが出て、棚からぼた餅感も軽減されるのではないかと思うのですが……。「シキシマの中の壁」が、エレンを守った理由(?)に当たると思うのだけど、これ、僕には全く意味が分からなかった。シキシマさんの壁って何?? 政府なの??

 最後の映像から判断するに、エレンたちは壁の外へと脱出したらしく、「壁の中での押さえつけられた人生よりも、危険でも壁の外での自由を生きるぜ!」というのが本作のテーマかと思われるのですが、その割にやっていることは壁の修復で、この辺りにもちぐはぐさを感じます。主人公たちは現状から脱却せんとしているのに、やってること自体は現状維持という。そりゃ他者のことを考えたら現実的にはそうするしかないんだろうけど、なんかちぐはぐ。政府の思惑とも違う、シキシマの狙いとも違う、カタルシスある第三の選択を見せてくれると良かったんですけどね。

 というわけで総評としては、「素晴らしくはないけど悪くもない」という感じでした。原作の存在感にびびらず、オリジナルの作品を作ろうとした姿勢は評価したいです。ところで、巨人は進化した人類だという説が劇中で出てきましたが、巨人を一本背負いし、腕力で建築物を倒壊させたあの力持ちデブも、別の形で進化した人類なのではなかろうか……。

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)

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