吉田豪インタビュー企画:長州力「業界に入るまで、プロレスを全然観ていなかった」(1) (3/3ページ)

デイリーニュースオンライン

ドラマ「セーラー服通り」の出演秘話

──進んでやってなさそうな仕事っていうと、最近はバラエティ番組のオファーとかも増えてるじゃないですか。

長州 いやこれは苦手ですねえ! ホントに! なんか違う土俵に上がってますよね、それは間違いなく違う土俵に上がってるなーと思う、うん。

──でも、バラエティは長州さんとは絶対に噛み合わないと思ってたら、意外と馴染んでるじゃないですか。

長州 いやいやいや! とんでもないですよ!

──とんでもないですか?

長州 うん、ホントにとんでもない! いっつも帰りの車のなかで自分に対して愚痴をこぼしてる。

──ダハハハハ! それでもオファーがあるっていうのは、ちゃんとそこにニーズがあるわけですよね。

長州 うん。でも、それをしなきゃしょうがないっていう現実問題というのはありますよね。できれば避けておきたいっていうか、なるべく自分がやりやすいような仕事をやって、なんでもかんでもっていうのはないですから。

──それこそボクも長州さんのしゃべるLINEスタンプとか全部買ってますけど、ああやって滑舌の悪さをネタに出来るようになるとは思ってませんでしたよ。

長州 ハハハハ! だからどこまで自分を任せられるか、そういうけじめみたいなものが自分自身でできてない。そうすると相手にそのへんをあまりにも気を遣われるから、迷惑かけてるなっていう思いはありますね。ああいうバラエティに出てる芸人さんたちも、それが仕事でやってるから、なんでもかんでもいいわけじゃないと思うんですよね。やっぱりみんな力がある人たちが残ってる、そういう世界ですよね。あの人たちも初対面の人たちが多いから、何かうまく引き出してって気遣いさせてるのはわかりますよ。そのへんがちょっとつらいなと思いますね。だからなるべく自分も枠を緩めていかないとっていうのはありますよね。

──芸人さんはプロレスファンが多いから、確実に長州さんへのリスペクトはありますからね。

長州 そういうところがたしかにあるんですけど、反対にまた気遣いもあると思いますね。

──気遣いせず、もっとキツくいじってほしいですか?

長州 いやいや、そういうのは考えてもいない……考えてもいないですよ。たしかに難しくて厳しい世界ですよね。僕なんか、たかだか1~2年でそういうこと言うのもおかしいけど、やってる人たちはどんどん出ては消え出ては消えっていうのが多いみたいですから。

──革命戦士としてブレイクしていた80年代半ばぐらいに、長州さんがいろんな番組に出た時期もあったじゃないですか。それこそドラマに出たりとか。

長州 そうか? でもそんなに……ドラマって?

──『セーラー服通り』(86年、TBS系。主演/石野陽子、藤原理恵)とか。

長州 ああ、そんなのはもう何年も……ホントに1~2回ぐらいのもんで。

──長州さんが芸能路線にチャレンジした時期はあったけれど、たぶんそれが苦手で身を引いたんだろうなと思ってたんですよ。

長州 いやいやいや、あの頃はまだ自分の仕事でやれることがあるから。芸能の世界とか、あまり考えてなかったですよね。

──歌を出したこともあったじゃないですか。

長州 ……はい?

──宇崎竜童さん作曲のシングル『明日の誓い』(86年/キングレコード)もアルバムも持ってますよ。

長州 いや、だからそれもなんか……周りに乗っけられたというか。まあ、乗る自分もいたんですけど……。

──あの時期は乗ってましたよね(笑)。

長州 決して歌がうまいわけでもないし。でも、やっぱりそのときそのときの時代背景で、自分もちょっとその時代に乗ってたのかなと思って。そうすると歌なんか音痴だろうがなんでもいい、とにかく出しちゃえばいいんだっていうようなアレですかね。それは、いまでもあんまり芸能界って変わらないんじゃないかなと思いますよね。なんか話題がある人がどんどん出て、力があるっていうか、対応できる人は残っていって、対応しきれない人間はやっぱりいなくなっていくっていう、そういう世界じゃないのかなとは思うんですけどね。

──長州さんは当時、やってみて向いてないなと思ったわけですか?

長州 ああ、僕はもう向いてないですよ、うん。間違いなく向いてないですね。向いてるとか向いてないとか、そこまでも考えてないです。

──素朴な疑問ですけど、長州さん、プロレスは向いてると思ったんですか?

長州 やっぱり入ったときは向いてないと思ったでしょうね。たしかに食うためっていうか、とにかく社会に出て行くわけだから、じゃあどこに住んでどうやって生計を立てていくんだっていうことで。

──同じレスリング出身のジャンボ鶴田さんが「全日本プロレスに就職しました」って言ったのに近い感覚ですかね。

長州 そうですね、うん。それもありますよね。あのときは「えぇっ!?」ってみんな驚いてましたから。入る前はプロレスを観るってことはなかったですからね。(ジャイアント)馬場さんとか(アントニオ)猪木さんとか坂口(征二)さんとか、そういう人たちは新聞とかで見てわかるけど、それ以外どういう選手がいるのかまったくわからない。

──それくらいの感覚で入っちゃうのもすごいですよね。

長州 すごいっていうか、その選択肢しかないわけですよ。いつまでも体育寮にいるわけにいかないし、下の人間は冷たい目で見るし。

──ダハハハハ! それならしょうがないです!

長州 ハハハハハ!

<次回に続く>

プロフィール

プロレスラー

長州力

長州力(ちょうしゅうりき):1951年、山口県出身。ミュンヘン五輪出場の実績をひっさげて、1974年に新日本プロレスでデビュー。“革命戦士”の異名で大人気を獲得する。以後、新日本だけでなく、全日本プロレス、WJプロレス、リアルジャパンプロレス、ドラディジョンなど様々なマットで活躍。2010年からは、藤波辰爾、初代タイガーマスクと「レジェンド・ザ・プロレスリング」をスタートさせている。

プロフィール

プロインタビュアー

吉田豪

吉田豪(よしだごう):1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。また、近著で初の実用(?)新書『聞き出す力』も大きな話題を呼んでいる。

(取材・文/吉田豪)

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