吉田豪インタビュー企画:長州力「いまでもアキラに言うよ、わざと蹴っただろって」(3) (3/3ページ)

デイリーニュースオンライン

長州力が考える「国籍」と「差別」

──あと、今回の本では国籍の話もかなり掘り下げてましたけど……。

長州 掘り下げてっていうか、もうみんな知ってるしね。

──それで思い出したのが、長州さんは『朝まで生テレビ』に出たこともあるじゃないですか。

長州 ありますよ(あっさりと)。

──しかもあのときはゲストでもなんでもなく、突然長州さんが現れて。

長州 そう!

──あれってなんだったんですか?

長州 あのときはちょうど僕の先輩がテレ朝にいて。なんか『朝生』でやってて、これは違うなと思って、聞きに行こうかなって。

──テーマが差別のときでしたよね。

長州 うん。で、先輩に「来る? じゃあ来てすみっこにでも座ってろよ」って言われたから行ったら、司会者が「緊急参戦!」みたいな感じで紹介して。でも、ゲストじゃなくてお客さんのほうにいたんですよ。

──あれ、リアルタイムで観てて驚いたんですよ。当時、新日本の事務所って六本木のテレ朝の本社の中にあったから、ぶらりと行けたのかなと思ってたんですけど。

長州 前もって連絡してましたよ。

──で、そのとき長州さんが言われたのが、「俺は差別されて強くなった」っていうことで。

長州 何をしゃべったかわかんないですけどね、でも日韓の部分でいろいろやり取りしてて、客もワーッと来てたから。

──何かが違うなと思ったんですか?

長州 うん、なんかみんな両サイドわけのわかんないこと言ってて、だからって俺がど真ん中に座るわけにもいかないし。まあ、それはもうあの時代だろうが、いつでもそうですよね。やっぱりイジメや差別の連鎖っていうのは変な人間を作りますよ。いまの世の中でもこれだけ異様な事件が起きて、これホントにおもてなしの国の事件なのかなっていう、異様な人間が作られる。昔だったら「こいつヤベえな」ってなんとなく雰囲気でわかったけど、いまはまったくわからない怖さがありますよね。娘もみんな海外から帰ってきて就職して、みんなひとりで住んでるから、怖いなと思いますよね。しょっちゅう電話で「ちゃんと生活しなきゃダメだぞ」って言ってて、子供たちは口うるさいなと思ってるかもしれないけど。

──今回の本で、長州さんが帰化申請中だっていうのも初めて知りましたけど。

長州 うん、帰化申請ですよね。子供たちと一緒に。やっぱり感覚もちょっと変わってきたっていうか、べつにどっちでもいいって部分はあるんですけど。娘たちも大きくなって、娘たちと海外旅行なんかすることが多くなって。

──それで不便もあるわけですね。

長州 そうですね。人間は生まれ育って教育を受けたところが故郷になるわけだから、そういう意味ではいまいろいろ揉めてるし、世の中の情勢のことでいろいろあるだろうけど。

──ネット上で在日の人がバッシングされるような時代になっちゃってますからね。

長州 あ、全然そういうの調べたことないですよ。僕、ネットは見ようと思ったことも見たこともない。

──そうなんですか!

長州 なんか反論ありますか? 反響とか。

──長州さんに対してとかじゃなくて、単純に民族差別的な人が増えてきている状況がまずあると思うんですけど。

長州 増えてきてるんじゃなくて、もともとイジメも差別も昔からあるわけだから。それは宗教や憎しみや、そういうところからみんないがみ合って、何百年もちっちゃい国が闘ってきてるわけでしょ。日本的な言い方かわかんないけど、差別やイジメはなくなるのが一番いいんだろうけど、なかなか。

──良くないことだけど、決してなくなりはしないと思いますね。

長州 なくならないと思いますよ。いまも学校とかそういうところでイジメや差別をして、されたほうは命を絶つっていうことが日本はすごく……日本だけじゃなくて、たぶんいろんな国でもあると思いますよね。こんなこと言ったらあれだけど、どっちみちイジメられるんだったら勇気を持ってぶっ飛ばせ(笑)。どっちみちイジメられるんだったら負けてもいいからぶっ飛ばしちゃえって思う。イジメられて自分の命を絶つなんてホントに……。でも、残念ながらそういうものはなくならないですよね。

──長州さんはインターネットを見ようとしたこともないって言ってましたけど、ネットのニュースサイト的なものは見ないですか?

長州 ああ、それは見ますね。なんやかんや言っていまのシリアの難民だってみんなヨーロッパの人間は柵を作っちゃうわけだから。いいこと言ったってみんなそうで、食料だってみんなぶん投げて、まるで動物にやるみたいにして、それがインターネットで配信される時代になっちゃった。あんなもん見ると、誰が人間で何が平和なのかわかんなくなっちゃいますね。まあ、それはそれで日本は世界でもODAで貢献してるんだったら、客船でもチャーターして難民を迎えに行って、どっかから連れて来て、国が少し安定するぐらいまでは面倒を見られるんじゃないかな。それは来るか来ないかは向こうの人たちが決めればいいことで。

──長州さん、やっぱりプロレス以外の話のほうが話しやすそうですね。

長州 いや、そんなこともないですよ。やることないから、いつもテレビ見てるだけ!

プロフィール

プロレスラー

長州力

長州力(ちょうしゅうりき):1951年、山口県出身。ミュンヘン五輪出場の実績をひっさげて、1974年に新日本プロレスでデビュー。“革命戦士”の異名で大人気を獲得する。以後、新日本だけでなく、全日本プロレス、WJプロレス、リアルジャパンプロレス、ドラディジョンなど様々なマットで活躍。2010年からは、藤波辰爾、初代タイガーマスクと「レジェンド・ザ・プロレスリング」をスタートさせている。

プロフィール

プロインタビュアー

吉田豪

吉田豪(よしだごう):1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。また、近著で初の実用(?)新書『聞き出す力』も大きな話題を呼んでいる。

(取材・文/吉田豪)

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