【嘱託殺人】伊勢・女子高生殺人事件で深まる謎と痕跡を追う (3/3ページ)

東京ブレイキングニュース

 14年11月、千葉県茂原市で、足の痛みを訴えていた女性(当時83)を夫の男(93)が殺害した。女性からの依頼だった。千葉地裁は「短絡的な犯行」としたが、「愛情故の犯行だったことを疑う余地はない」「60年以上連れ添った妻を自ら手にかけることを決断せざるを得なかった被告の苦痛は道場を禁じ得ない」として、懲役3年、執行猶予5年の判決を言い渡した。これは、病気を苦にした希死念慮があった妻を、愛情を持って殺害したケースだ。

 一緒に死ぬという「心中」については、一見、恋愛感情か、それに似た感情を持っている者同士でするというイメージが強いが、必ずしもそうではない。

 私は自殺願望を持つ人たちを取材している。友人としての距離感にかかわらず、「一緒に死にたい」相手と、「殺してほしい」相手。そして、「一緒には死にたくない」相手、といった感覚を持っている持つ人たちがいる。自殺願望があり、恋人がにいたとしても、別の人と「一緒に死にたい」相手がいたり、逆に、「この人だけは死んでほしくない」と思ったりする。むしろ、恋人だからこそ、「心配かけたくない」と、自殺願望を打ち明けないといったこともある。

 119番通報をしたのは交際相手だったが、波田さんは殺害依頼の相手にしなかったということは、交際相手を巻き込みたくなかったのだろうか。それとも、依頼はされたが、交際相手が断ったのだろうか。そのあたりは今後、わかってくるかもしれない。

 学校の対応もベストどころか、ベターとも言えません。行方不明だった波田さんが見つかったあと、波田さんが通っていた高校の校長が会見をしている。学校によると、波田さんは勉強熱心で成績は学級でトップ。演劇部に所属し、看護系の専門学校への進学を希望していた。ただ、担任との面談で「自分なんか生きていても価値がない」とこぼすなど、劣等感の強い面もあったという。

 生きづらさを抱えた少年少女の中には、成績がよく、校内での立場が一見よい場合、例えば生徒会長をしているといった人も少なからずいる。そして、周囲とは適用できていると思われたりする。将来への希望を語ることもできたりする。「死にたい」という本心を悟られないように、「良い子」の仮面をかぶっていたりする。波田さんも、そうした過剰適応な面があったのかもしれない。

 また、7月に家出した時には「自殺しようと思った」と後で打ち明けたという。校長らとの面談では「友人と家族に迷惑をかけた。もう心配かけることはしない」と反省していたという。この時点が、メンタルヘルスの観点でサポートするとか、自殺願望を軽減するようなことをできるチャンスだったが、特別なサポートがあったようには思われない。校長もそれをわかっているのか、「この一ヶ月間の見守り不足は歪めない」と悔やんだ。

Written by 渋井哲也

Photo by TerryChen - Blooming Beauty

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