数億人の未来を変えた!「ノーベル医学生理学賞」受賞の大村智氏とメルク社が行った無償の国際貢献

FUTURUS

数億人の未来を変えた!「ノーベル医学生理学賞」受賞の大村智氏とメルク社が行った無償の国際貢献

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既に『FUTURUS』でも速報としてお知らせした通り、スウェーデンのカロリンスカ医科大が10月5日に発表したノーベル医学生理学賞の受賞者は、日本人の大村智・北里大特別栄誉教授(80歳)とアイルランド出身で米ドリュー大名誉研究フェローのWilliam C. Campbell氏、そして中国では、自然科学分野での初の受賞という快挙を成し遂げた中国中医科学院の屠ヨウヨウ(Tu Youyou:「ヨウヨウ」は“口へんに幼”が2文字)博士の3名だった。

彼らの受賞は、寄生虫による感染症とマラリアの治療法を発見したことに対する業績が評価されたものだ。

特に大村氏とCampbell氏の研究成果が、メルク社による無償の薬提供という形で、多くの人たちを救ったことが称賛されている。その数なんと億単位にのぼるという。

■ ノーベル医学生理学賞の研究成果

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大村氏とCampbell氏が貢献したのは、『イベルメクチン』と呼ばれる寄生虫病の治療薬の開発だった。『イベルメクチン』はアフリカや中南米などの熱帯地方で流行した『河川盲目症(オンコセルカ症)』に効果があった。

『河川盲目症』は、患者の2割が失明すると言われている。しかし、『イベルメクチン』が年間3億人の患者に使われ、彼らを失明から守っているのだ。

もう一人の受賞者である屠氏の研究は、伝統的な薬用植物を研究することで、キク科の薬草から抽出した『アルテミシニン』という物質が、マラリアの治療に有効であることを突き止めた。

彼ら3名の研究によって開発された薬は、アフリカ地域を初めとして年間数億人が罹ると言われている病気の治療に貢献したのだ。

それでは大村氏とCampbell氏の研究成果についてもう少し詳しく見てみよう。

■ 寄生虫病の治療に貢献した化学物質発見

大村氏は微生物が作り出す化学物質の研究を行っていた。そのため、氏と研究室のメンバーは、常にポリ袋を携帯しており、有望そうな土を見つけると採集していたという。

あるとき、静岡県伊東市のゴルフ場の土から見つけた放線菌が、『エバーメクチン』という化学物質を作り出すことを発見する。

この『エバーメクチン』を、メルク社での共同研究者であったCampbell氏らが動物の寄生虫駆除に役立つ事を確認した。

そこで、分子の形状を少し変えることでより効果を高めた『イベルメクチン』という薬を開発することに成功する。

その効果は絶大だった。『イベルメクチン』は寄生虫の神経信号を乱し、少量を服用させるだけで寄生虫を駆除できたのだ。

これが1981年に発売されると、あっという間に世界一の売上となり、その座は20年間守られた。この『イベルメクチン』の効果によって、畜産業の生産効率が飛躍的に上がったのだ。

ところが、この『イベルメクチン』が、人の寄生虫駆除にも効果があることが分かる。

アフリカや中南米の一部で恐れられていた『河川盲目症』と『象皮症(リンパ系フィラリア症)』いう寄生虫病の治療に役立つ事が分かったのだ。

『河川盲目症』は『ミクロフィラリア』という線虫の幼虫が全身の皮膚の下に広がるという恐ろしい病気で、これが目に達すると失明する。

一方の『象皮症』は寄生虫がリンパ系に影響を与える事で、足がまるで象になったかの様に腫れてしまう病気だ。

しかしこれらの病気の元となる寄生虫は、『イベルメクチン』を年に2回飲むだけで駆除できることが分かった。

■ 研究成果を無償で提供したメルク社

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そこでメルク社は、元々畜産用に開発したイベルメクチンを、人の治療にも役立てることを決めたのだが、ここからの同社の活動が称賛される事になった。

なんと、人用の『イベルメクチン』は無償で提供することを決めたのだ。同社は既に畜産用で莫大な利益を上げていたからだが、この無償提供に大村氏の許可を得ることができた。

その結果1987年から人用のイベルメクチンが無償で提供されることになる。

そして世界保健機関(WHO)が『河川盲目症』と『象皮症』の制圧計画を進めた結果、これらの感染症が近く撲滅できる可能性が見えてきていると言うから驚く。今では年間に約3億人がイベルメクチンを服用しており、多くの人を救い続けている。

“ノーベル賞もの”という喩え方があるが、まさしく大村氏の研究は、“ノーベル賞もの”であったわけだ。

日本では医学生理学賞の受賞者は大村氏で3人目であり、物理学、化学を加えた自然科学三賞では15人目となる。

これからも日本が、世界に貢献できる研究者を生み出す国であって欲しいと願いたい。

【参考・画像】

※ The Nobel Assembly at Karolinska Institutet has today decided to award – Nobelforsamlingen

※ 大村氏、ノーベル賞 熱帯の感染症、失明防ぐ薬 医学生理学賞 – ニュース – アピタル

※ ノーベル賞受賞 野口英世も喜んでいる:社説・コラム – 東京新聞

※ <大村さんノーベル賞>土に着目で大発見 寄生虫駆除で熱帯の生活改善 – 東京新聞

※ joingate / Shutterstock

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