死人の出ない歴史ドラマ「黒田騒動」の謎 (3/4ページ)
「黒田騒動」以後の歴史の流れを見ても、すぐに島原の乱が起こっています。これは徳川体制になって最初の内乱ですから大変な事態で、そこに黒田は出兵せざるを得ませんでした。それらを考えても、この本で書いた筋立ては実際に起きていたことに近いんじゃないかと思います。
――「黒田騒動」の謎の部分をフィクションで埋めた、ということですね。
葉室:そうです。書き方としては若干トリッキーだなと思いますが、トリッキーなフィクションを重ねないと、「歴史の真実」のような部分はなかなか見えてきません。この本で書いたことがまったくの事実かどうかはわかりませんが、これに類した何かが起きていたんじゃないかと思っています。
――戦や戦闘の場面が少ない分、緊張感のある心理戦が物語の軸になっています。
葉室:江戸幕府と、潰されかけている外様の大名家ですから、実際にも心理戦的な駆け引きは当然あったでしょうね。
「黒田騒動」については地元では「栗山大膳忠臣説」っていうのが昔からあるんですよ。要するに、大膳がその身を呈して主君に反省を促した、と。でも、いくら反省を促すといっても、自分の主君を訴えるというのは一種の内部告発ですから、やり方が荒っぽすぎますよね(笑)。本当に藩が潰れてもおかしくない。現に隣の藩の加藤家が潰れたばかりなのに、同じようなことをやって「これは主君に反省を促すためだ」というのは、現実味が薄いと思いますが、彼が大胆にも主君を訴えた狙いは何だったのかという点は、やはり興味をそそります
――その栗山大膳は、この作品の中では飄々としつつも非常な策略家として書かれています。こうした人物像はどのように作り上げていったのでしょうか?
葉室:純粋に言えば、私の好みですね(笑)。こういう男がいいなという。
これまでにも、「黒田騒動」や栗山大膳を書いた小説はいくつかあって、たとえば海音寺潮五郎さんが『列藩騒動録』で書いた大膳は、多少衒学的というか、主君の黒田忠之に対して頭ごなしに説教をするような人物で、典型的な口やかましい重臣です。なおかつ、ちょっと傲慢な感じのする人だということを言っていたりする。
実際の大膳も多少そういうところがあったんじゃないかと思っています。