一度「無罪」になったら、絶対に「有罪」にならないって本当?
推理小説でもおなじみの「真犯人」。あらたな証拠が見つかり、じつは意外なひとが犯人だった!なんて展開はお約束ですが、裁判で「無罪」となったあとに証拠が見つかっても、絶対に「有罪」にならないのはご存じでしょうか?
日本の法律には一事不審理(いちじふしんり)というルールがあり、一度「無罪」となった事件は永久に無罪、証拠が見つかろうが自白しようが有罪に変わることはありません。ただし刑事事件と民事裁判は別モノなので、「無罪」の真犯人を相手に裁判を起こすことも可能な、フシギなルールが存在するのです。
■「一事不審理」で、真犯人は無罪のまま
裁判のニュースで、一審は無罪、二審は有罪のように結果が変わることがあるのはご存じでしょう。これは控訴(こうそ)と呼ばれるシステムの結果で、判決に不服があるときは「もう一度裁判し直して欲しい」と要求することができ、高等裁判所→最高裁判所と進みます。これは刑事事件も同様で、「私は無罪だ」と控訴することも可能。ただし「判決通りです」と認めるか、最高裁判所が結論を出したら「おしまい」で、納得いかない!と騒いでも、二度と裁判がおこなわれることはありません。
それでは「無罪」となったあとに、証拠が出てきたらどうなるのでしょうか? 多くのひとは「有罪に決まってるだろ!」と思うでしょうが、なんと無罪。一度無罪が決まった事件は、二度と罪に問われないのです。
これは一事不審理(いちじふしんり)と呼ばれ、根拠はなんと憲法・39条。「一度無罪と決まった「行為」は、刑事上の責任を問わない」と定められているので、たとえば、
・ドロボウと疑われ、裁判にかけられた
・アリバイ証言によって「無罪」となった
その後に、じつは証言がウソだったとわかっても、このひとは有罪になりません。もし訴えられても、「一度決着したでしょ」と、刑事訴訟法・337条-1によって裁判所は免訴(めんそ)、審理しないで終了!になるのです。
これは民事裁判も同様で、結論が出たら二度と「同じ」裁判は起こせません。しかたないと諦めるのも一手ですが、後日改めて、は不可能な仕組みになっているのです。
■無罪のひとに損害賠償請求?
もし無罪になったひとが「真犯人」だったら、被害者は「泣き寝入り」するしかないのでしょうか? 答えはNoで、刑事事件と民事訴訟は別モノなので、訴えてやる!も可能です。
代表例は交通事故で、軽微な事故なら刑事事件にならず「無罪扱い」が一般的ですが、壊した物やケガを負わせたひとの治療費を払うのは当たり前で、被害者から損害賠償請求されても文句は言えません。また、きわめてまれなケースですが、海外の殺人事件では、
・刑事裁判 … 無罪
・民事裁判 … 有罪
となったケースもあり、刑事/民事が必ずしも一致するとは限らないのです。
裁判の結果は覆せない、と聞こえるかもしれませんが、正確には「無罪」が「有罪」になることはない、なので、有罪のひとが一転無罪は大いにあり得る話です。もし事件に巻き込まれ、有罪と言われても、あらたな証拠が見つかれば無実を証明できるので、あきらめないことが肝心です。
■まとめ
・一度「無罪」と決まった事件は、どんな証拠が見つかっても「有罪」にならない
・民事訴訟でも「結論」が出たら、同じ裁判を起こすことはできない
・刑事と民事では、結果が食い違ってもフシギではない
(関口 寿/ガリレオワークス)