大ヒット中の映画『バクマン。』にオッサン視聴者が共感できないワケ (3/4ページ)
サイコー、カッコ悪い
週刊少年ジャンプでの連載を目指す主人公二人(サイコーとシュージン)は非常に生き急いでおり、高校に通いながら連載をするという一事を取ってみても、おっさんからすれば共感しがたい話です。ただ、これが若い人たちにウケるのは非常によく分かるところで、要は「大人の世界」なんですよね。高校生はジャンプを「読む」側なのに、俺たちは「描く」側だ、お前たちとは違う、俺たちは大人の世界に片足以上突っ込んでいるのだ、という感覚です。
僕も中学生の頃は新聞配達をしている同級生がカッコ良く見えたものです。子供なのに大人の経済活動をしてるのがカッコイイんですね。大人の仲間入りしてる感じで。なので、サイコーとシュージンは高校生なのに無理して週刊少年ジャンプで連載をする。高校生なのにジャンプで連載してるのが(若い視聴者から見て)カッコイイから。
しかしこれもおっさんから見ればどうでもいい話で、だって高校生でデビューしようが、卒業後にデビューしようが、芸歴が一年、二年違うだけの話ですからね。大人の世界で経済活動を十年、二十年やっているおっさんから見れば誤差の範囲です。それでも高校生活を十分にエンジョイした上で、さらに大人に混じって漫画を描いてるならカッコイイんですけど、サイコーとシュージンは学園生活がほぼ壊滅しています。卒業式の日に式をブッチして教室に残った二人の会話が印象的です。
「別にこの学校に想い出なんかないし」
「後半はほとんど寝ていただけだったし」
と、こんなことを言うのですが、おっさんからしてみれば、高校生なのに背伸びをしたせいで、普通の高校生が享受できるはずの喜びすら見失っているわけです。それと引き換えに手に入れたのがたかだか一年、二年の芸歴アドバンテージ。失っているものの方が遥かに大きいと感じるのです。
いっそ高校に進学しないとか、高校中退して漫画を描くとか、そこまですれば「またそれも生き方」と思えるのですが、足枷にしかならない学園生活を無駄に消耗していく姿が非常にカッコ悪い。卒業式には出ない。でも卒業式の日に学校には行く。「なんとなく行くだけ行っている」。この精神性……! カッコ悪い!!
ただ、これも理解はできるところで、リアルの学生たちも多くは学園生活に充実感を感じられずにいると思うんですよね。なので、学園生活は無駄に消耗しながらも、それでも打ち込めるものを持っているサイコーとシュージンに共感して、「カッコイイ」と感じるのも分からなくはなし。おっさんの視点から見ると、「高校生活をエンジョイするのも大切なんだよ」となるわけですが、当の高校生たちからしてみれば、「だって現に高校つまんねーんだぜ!?」となってしまうのでしょう。
個人的には「人並みの学園生活すら享受できなかったやつらに、少年を楽しませる漫画が描けるのか?」と疑問に思うのですが(だって彼らは「楽しいこと」を理解できてないんでしょう?)、まあそこは作中で「描けた」ということになっているので描けたんでしょう。ルサンチマンでも作品は作れるっちゃ作れる。