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「ノースコリアン・ドリーム」をつかめ!

韓国では、中年以上の男性なら平社員だろうがCEOだろうが商人からは「社長!(サジャンニム=社長さま)」と呼び止められる。日本でもよく使われるが、韓国の方が使用頻度は圧倒的に多く、最近では北朝鮮でもよく使われているという。ただし、その意味合いはかなり違う。

平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は次のように語る。

「商人が道行く人を『社長!』と呼び止めることはありふれた光景だ。新義州(シニジュ)の霞下市場に行くと、あちこちの売台(テナント)から『社長!いらっしゃい!ちょっと見てって!』と声をかけられる」

どうやら、それなりの格好をしている人を呼び止める言葉として「社長」が使われているようだ。

「社長!」と呼ばれた相手は、一瞬戸惑うが自尊心をくすぐられるようで、まんざらでもない気持ちになるようだ。普通は「アジョシ!」(おじさん)「アジュンマ!」(おばさん)と呼び止めるのだが、やはり「社長!」と呼ばれるのとはわけが違う。

ところで公式には「民間企業」がない北朝鮮で、なぜ「社長」という言葉が使われ始めたのだろうか。そのきっかけは、過去の計画経済を完全に崩壊させた90年代末の大飢饉「苦難の行軍」だった。

この時期、労働党、人民軍、行政機関などがこぞって外貨稼ぎに乗り出した。通常、北朝鮮では国営企業に「◯◯工場」「△△企業所」という名称が付けられるのだが、外国人にはわかりづらい。そこで「XX貿易会社」という名前が使われ始め、その責任者を「社長」と呼ぶようになった。

「責任秘書」「支配人」という肩書に慣れていた北朝鮮の人々にとって「社長」という肩書は驚きを持って受け止められた。

社長という言葉は、「外国人とビジネスを行う人」「外国から金を儲けてくる人」という、党幹部や支配人を上回る意味合いが含まれるようになった。餓死者が続出していた当時、中国から食糧を買い付け、人民を助け、国にも外貨を捧げる「社長」は尊敬と憧れの対象となる。

さらに「社長」という言葉には、それ以上の「ノースコリアン・ドリーム」が込められている。

北朝鮮社会では土台、つまり「出身成分」が非常に重要視される。

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