【世紀の発明】「インスタントコーヒー」は日本人が発明したってほんと?
コンビニでも手軽に飲めるようになった「コーヒー」。家庭や職場で定番の「インスタントコーヒー」は日本人が発明したのはご存じでしょうか?
インスタントコーヒーが発明されたのは1903年とされ、日本はまだ明治時代のまっただなか。生みの親である「カトウ・サトリ」氏は、アメリカで特許を取得した記録は残っているものの、そのほかの資料は皆無に等しいナゾの人物。会社を立ち上げるも、別の特許のインスタントコーヒーがヒット商品となる、残念な運命をたどったひとなのです。
■超ハイテクだった明治の「インスタントコーヒー」
海外ドラマではオフィスに「飲み放題」のレギュラーコーヒーが定番で、コーヒー好きにとってはうらやましい光景でしょう。海外ならではと思えるでしょうが、日本のコーヒー消費量は意外にも多く、2013年データからおよその量をあげると、
1位 … アメリカ(140万トン)
2位 … ブラジル(120万トン)
3位 … ドイツ(56万トン)
4位 … 日本(44万トン)
と世界4位のコーヒー好き。いたるところにコーヒーショップがあるのも、コンビニでひきたてコーヒーが飲めるのも当然の結果で、さかのぼればインスタントコーヒーを発明したのも日本の科学者なのです。
世界初のインスタントコーヒーの生みの親は「カトウ・サトリ」という人物で、1903年にアメリカで特許を取得。なんと明治36年のことですから、どれだけコーヒー好きなの?って感じですね。それ以前にもお湯を注ぐだけで飲める「粉末コーヒー」は存在したものの、味、風味、保存性ともにイマイチで、おいしいといえるものではありませんでした。これに対しカトウは「真空乾燥法」によって粉末化、この技術が買われて特許を取得しました。
これは標高の高い場所でみられる現象と同じで、
・気圧が低い = ふっ点が下がる
・ふっ点降下 = 100℃未満で蒸発する
この原理によって真空容器に入れたコーヒーから水分を取り除き、粉末化したのです。加熱しないので風味も変わりにくく、現在のインスタントコーヒーでも定番の「フリーズ・ドライ」製法を用い、「ソリュブル・コーヒー」の名で世に送り出したのです。
■100年後の現代に「ソリュブル」再来
インスタントコーヒーはヒット商品になったのでしょうか? 残念ながら答えはNoで、会社を立ち上げるも鳴かず飛ばず……斬新すぎて世に受け入れられなかったのです。
当時、コーヒーは豆から入れる「レギュラー」が当たり前で、便利だとは思うけど……程度の評価しか得られず、現在のようにどの家庭にも普及するだけの魅力にはなりませんでした。世界的なヒット商品となったのは発明から30年以上も経ったあとで、皮肉なことにきっかけは第二次世界大戦……しかもこのときに売れたのは別の特許の製品、どんなに売れてもカトウの功績にはならなかったのです。
日本で親しまれている「インスタント」の名称も、最近は「ソリュブル」と名付けられた製品も見かけるようになりました。カトウの発明したインスタントコーヒーは、製法だけでなく、名前までもが先進的すぎたのかもしれません。
■まとめ
・インスタントコーヒーの特許を取得したのは、日本のカトウ・サトリ氏
・現在と同じ「フリーズ・ドライ」製法が用いられた
・味/風味とも良好だったが世に受け入れられず、ほとんど売れなかった…
・インスタントコーヒーが普及したのはおよそ30年後、第二次世界大戦がきっかけ
(関口 寿/ガリレオワークス)