紅白歌合戦“ドラマチック歌姫”の60年史!【<07年第58回>「友達の詩」中村中】 (1/2ページ)
AKB48や中川翔子、リア・ディゾンが「アキバ枠」として話題をさらった07年、さらに異色のシンガーがいた。戸籍上は男でありながら、史上唯一の紅組での出場となった中村中(あたる)(30)のこと──。
──厳密には05年、ガレッジセールのゴリが「ゴリエ」というキャラクターで紅組から出場したことはあります。こうした“飛び道具”ではなく、正統派で紅組から出場したことは例がない。どちらの組で、という協議はありましたか?
中村 それはなかったですね。出場が決まると同時に紅組で、という流れだったと思います。
──紅白出場時は22歳ですが、披露した「友達の詩」は15歳で初めて作った曲だったとか。
中村 まだ「性同一性障害」という言葉も確立されておらず、私は人と違う気がする。自分は何者なんだろうか、愛することはいけないことなんだろうか、いや、そんなことはない‥‥。そんな自分自身のアイデンティティを確かめるために書いた曲で、それで出場できたのはうれしかったです。
──この曲のヒットと前後して、メディアにおける「カミングアウト」も話題になりました。
中村 そうですね、知ってもらういい機会になるのかなと思いまして。
──さて、この年の紅白は紅組の司会がSMAPの中居正広、白組が笑福亭鶴瓶というイレギュラーな組み合わせ。歌の前には性同一性障害であることの紹介VTRが流れ、さらに鶴瓶が母親からの手紙を読み上げるという丁寧な演出。
中村 そうでしたね。母親からの手紙に「親不孝かもしれないけど、こうして歌っていくことが親孝行」と返していますね。
──ただ、新人としては、かなり後半の出番が用意され、紅白全体の進行が約2分半の遅れ。紹介VTRや手紙のくだりをカットする指示も出たと聞いています。
中村 私もあとで知りました。隣で中居さんが何度も首を横に振っていて、その時はわからなかったんですけど、スタッフからの指示を毅然として拒否なさっていたそうです。