北朝鮮市民、党本部前で抗議の切腹「警察署長に全財産を奪われた」 (1/2ページ)
現在、北朝鮮の首都・平壌を中心に衝撃的な事件の噂が出回っている。平壌にある朝鮮労働党の本部前で、ある市民が切腹して自殺を図ったというものだ。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、噂の内容は次のとおりだ。
この人物は、保安署(警察署)の署長に全財産を没収された。どのような事情でそうなったのかは不明だが、その不当性を訴えに、平壌にある労働党中央委員会組織指導部の信訴処理課を訪れた。しかし、担当者との面談を拒否された上に「ガタガタ騒ぐな」と脅された。
対応のひどさに絶望したその人物は、抗議の意を示すために、労働党庁舎の前で割腹。生死について確かなことは不明だが、噂には「死亡した」とのニュアンスがある。
当局は、この噂が広がることを恐れて、緘口令を敷いている。
各地の人民班(町内会)の会議を通じて「詳しい経緯を知らないのなら、むやみに喋るな」との指示を住民に伝達している。しかし、人の口に戸は立てられないもので、平壌郊外の平城(ピョンソン)では既に噂が広まってしまっている。
噂を聞いた住民からは「なんで死ぬんだ。頑張って生きてもう一度成功することで復讐すべきだ」「何の力もない庶民が死んだところで、国は可哀想だと思うわけがない。虚しい」と、自殺した人を悼む声が上がっているという。
「信訴」とは、中国の「信訪」と同様に、理不尽な目に遭っていることを権力中央に直訴するシステムで、一種の「目安箱」のようなものだ。元々は法制度の外にあるシステムだったが、98年に制定された信訴請願法で、法的根拠が与えられた。しかし、むしろそれ以降に機能が低下したと言われている。
機能低下というより、北朝鮮当局は事件の解決に興味を失っていると言ってもいいだろう。2005年にそれを表すような事件が起きている。
事件の舞台は中朝国境の街、新義州(シニジュ)だ。労働党131指導局傘下の強盛貿易会社のカン・テヨン社長は、中国との貿易で年間60万ドルを稼ぎだす優秀なビジネスマンだ。
しかし、20万ドルを労働党に上納し、残りの40万ドルをすべて着服して、労働者には一切賃金を支払わなかった。