管理栄養士に聞く! 抜け毛の予防になる食事とは!?
季節の変わり目やストレスフルな状態が続くとき、普段より毛の抜ける量が多くて驚くことはありませんか。「いつもと変わらない生活を送っているときに抜け毛が多いと感じる場合は、食事も見直してみてください」と話すのは、管理栄養士の西山和子さん。抜け毛と食生活の関係について、詳しいお話しを聞きました。
■髪のもと、タンパク質を積極的にとる
――食事の内容と髪の状態は、どのような関係があるのですか。
西山さん 髪は、細胞が分裂して成長していく体の一部であり、ケラチンというタンパク質でできています。ですから、成長に必要なタンパク質が不足すると丈夫な髪を作ることができません。健康な髪を維持するには、食事でタンパク質やミネラルを補給する必要があります。
――具体的には、どのような食事を心がければいいでしょうか。
西山さん 髪を健康に保つ食事をしているかどうか、次の4つのポイントに注目しましょう。
(1)タンパク質が不足していないか
(2)脂質を多くとり過ぎてないか
(3)食事全体のカロリー量が不足、あるいは過剰になっていないか
(4)栄養素のバランスが整っているか
まずは、髪のもと、タンパク質は欠かせません。タンパク質は、主に肉類・魚介類・卵・大豆製品・乳製品からとることができます。
――タンパク質の効率的なとり方はありますか。
西山さん 「体内で利用効率がいい良質なタンパク質を含み、さらに9種類の必須アミノ酸がとれる新鮮な食材を選ぶ」のがポイントです。
必須アミノ酸とは、タンパク質を合成する成分「アミノ酸」のうち、体内で作り出せないために食品からとる必要がある成分のことで、ヒスチジンや、バリン、ロイシン、イソロイシンなどがあります。
健康な大人の場合、例えば、肉60グラム、魚100グラム、卵1個、もめん豆腐100グラム、牛乳コップ1杯を摂取すると、1日に必要なタンパク質がとれ、アミノ酸バランスもよくなります。
つまり、必須アミノ酸をうまく摂取するコツは、1種類のタンパク質の食材だけを選ぶのではなく、卵と豆腐と肉を選ぶなど、「必ず、1日で数種類を組み合わせて食べること」です。
――(2)の脂質は髪とどう関係するのでしょうか。
西山さん 脂質、中でも牛脂やラードなど動物性脂肪を食べるのは控えめにしましょう。「飽和脂肪酸」という悪玉コレステロールを増やし、血液の流れを悪くするような成分が原因で、頭皮の新陳代謝に悪影響を及ぼして頭皮が荒れ、抜け毛につながります。
脂身の多い肉より、鶏のささみや皮をとった胸肉、牛や豚ならヒレ肉を選びます。
魚介類や大豆に含まれる飽和脂肪酸は少ないので気にする必要はありません。油をひかえすぎても、頭皮の荒れにつながる可能性があります。
調理する場合は、下ゆでする、焼く途中で出た油脂をペーパーで吸うなど、適度に油脂を落としてください。何かを焼く場合には、血液をサラサラにする働きがあるオリーブ油を使うと良いでしょう。
また、ナッツ類やアボガド、クリームチーズ、チョコレートも、同様の理由から食べ過ぎないように気を付けましょう。
甘い菓子やスナック菓子を食べ過ぎると、血液中の中性脂肪を増加させてドロドロな血液となり、やはり頭皮にも悪影響が及ぶと考えられますので注意してください。
■ミネラル豊富な海藻類を食事に加える
――(3)のカロリーと髪の関係について、どう考えればいいでしょうか。
西山さん ダイエットなどでカロリーを制限していると、髪への栄養供給が滞る可能性があり、抜け毛が増えます。極端にカロリーを減らしたダイエットは控えるようにしましょう。
一方、カロリーの過剰摂取、つまり食べ過ぎや肥満の場合はすぐには抜け毛につながりませんが、高血圧や糖尿病のような生活習慣病になる可能性が高まります。
生活習慣病は体へのさまざまな悪影響があり、抜け毛も増える可能性があるので気を付けましょう。
――(4)に関して、これまでのお話のほかにとるべき栄養素はありますか。
西山さん 「ビタミン」や「ミネラル」など、代謝に必要な栄養素は欠かせません。主食、主菜、副菜のそろった食事を心がけましょう。
中でも海藻類には、ミネラルが豊富に含まれています。乾燥ワカメやダシ昆布などを活用すると、日々の食事で手軽にとることができます。昆布や煮干しでダシをとった、ワカメと豆腐の味そ汁がお勧めです。
また、睡眠不足やストレスは抜け毛の原因になると言われます。リラックス効果のあるハーブティーや温かい緑茶を飲むのもいいでしょう。
――ありがとうございました。
健康的な髪を作るためには、体と同様に、栄養バランスが整った食生活を意識して、タンパク質を種類豊富に食べることが大切だということです。さっそく実践したいものです。
(岩田なつき/ユンブル)
取材協力・監修 西山和子氏。糖尿病専門の医療法人弘正会・ふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)にて管理栄養士、糖尿病療養指導士。糖尿病、生活習慣病、メタボリックシンドロームの患者さんを対象に、パーソナルな食事指導にあたる。『専門医が考えた 糖尿病に効く「腹やせ」レシピ』(福田正博 洋泉社)の監修担当。また、食生活に関する記事の執筆、監修多数。