【冴え女シリーズ(8)】[女性小説家と男性編集者の場合]最終話(前半)「がんばりましょう2人で」 (2/3ページ)
自分の心の赴くまま書き上げた作品がとても醜いものに仕上がっていたからです」
藤沢「典子さんの恨みがすべてその小説にぶつけられていたんですね」
山田「はい、だからそれを私は戒めにしました」
藤沢「戒め?」
山田「これが私の本当の心ならば、忘れてはいけない、と」
藤沢「それが戒めですか」
山田「あとは、世間に人の紡ぐ言葉なんて所詮嘘の塊だと知らしめてやりたかったんです」
藤沢「というと?」
山田「醜い心を持った私が嘘で紡いだ綺麗な作品を世に認めさせられれば、人から発する言葉は全て嘘で出来ていると証明できると思ったんです」
藤沢「だから純愛小説を書いたんですね」
山田「でも、今日のことで、そんな考えこそ嘘の塊だと気づきました。結局、私が世界を信じられなくなっていただけだったんです」
藤沢「今は?」
山田「藤沢さんのおかげで、もう一度信じてみようと思えました」
藤沢「それならよかったです」
山田「だから、こんな小説も日記も写真たてももう要りません」
藤沢「中の写真も良いんですか?」
山田「はい。今度、加奈ちゃんに会いに行った時に一緒に写真を撮って、おそろいの写真たてを買います」
藤沢「ふふふ、そうですか」
山田「その時はちゃんと藤沢さんも一緒に写真に写ってくださいよ?」
藤沢「僕もですか?」
山田「もちろんです。