「愛苦しい」という言葉はなかった!? 間違って使われやすい漢字や言い回し

学生の窓口

間違った言葉の使い方をしているのに、本人はまったく気付いていないということがあります。たとえば、次のうち、間違っているものはどれかおわかりですか?

「愛苦しい」「悪どい」「うんちくを垂(た)れる」「責任を転稼する」「(年末の)書き入れ時」

じつは、「書き入れ時」だけが正解です。

「知らなかった・・・」「ずっと間違って使っていた」という人は、「汚名挽回」すべく、あるいは「二の舞を踏む」ことがないよう、この機会に正しい使い方を覚えましょう。

お気付きの方もいるかもしれませんが、「汚名挽回」と「二の舞を踏む」も間違った使い方です。詳しくみていきましょう。

●「愛苦しい」→「愛くるしい」が正解

たいへんかわいらしいという意味で使われる言葉ですが、「愛苦しい」ではなく、「愛くるしい」と表記します。

●「悪どい」→「あくどい」が正解

たちが悪いという意味の言葉ですが、「あく」は灰汁(あく)のことで、それに「どい」という接尾語がつき、あくが強いということをあらわしているのだとか。

●「うんちくを垂(た)れる」→「うんちくを傾ける」が正解

知識をひけらかすという意味合いで「うんちくを垂れる」と使っている人が多いのですが、これは誤用。うんちくは垂れるのではなく傾けるもので、「自分の学識・技能のすべてを発揮する」というのが正しい意味です。

●「責任転稼」→「責任転嫁」が正解

責任を他にかぶせることをいいますが、「転」でも「転」でもなく、「転」が正解です。なぜ「嫁」に? じつは、「嫁」には「よめ」「とつぐ」という意味のほかに「擦(なす)りつける」という意味があったのです。

●「書き入れ時」は

商売などでいちばん忙しい時という意味で、これは帳簿などへの「書き込み」(が増える)ところからきているといわれています。古くは、「期待」「当て」にするという意味で使われていたようです。

●「汚名挽回」→「汚名返上」が正解

「汚名」は悪い評判という意味で、「挽回」は元にもどすとか回復するという意味。ということは、「汚名挽回」では「悪い評判を回復」してしまうという意味に!回復すべきは「名誉」です。つまり、「汚名返上」で「名誉挽回」が正しい使い方です。

●「二の舞を踏む」→「二の舞を演ずる」が正解

前回と同じ失敗を繰り返すという意味で「二の舞を踏む」と認識されていることが少なくないのですが、その場合は「踏む」のではなく「演じる」になります。

「二の足を踏む」という言い方と混同していることが考えられますが、こちらは、ためらう、尻込みするという、まったく違った意味になります。

ところで、褒められたときなど「とんでもございません」と謙遜して言うことがありますが、これも正しい言葉ではありません。「とんでもないことです」が正解。

ただ、日本政府の見解では、「とんでもございません」でもよしとしています。2007年に文化庁が「敬語の指針」の中で、「『とんでもございません』(『とんでもありません』)は、相手からの褒めや賞賛などを軽く打ち消すときの表現であり、現在では、こうした状況で使うことは問題がないと考えられる」と示しているのです。

とはいえ、これは「誤用だ」として、強い抵抗感や違和感を持つ人もいるので、面接時などはもちろん、ビジネス上では本来の使い方をしたほうがよさそうです。

文・鈴木ゆかり

『日本語大辞典』(梅棹忠夫 金田一春彦 阪倉篤義 日野原重明・監修/講談社) 『日本国語大辞典』(小学館国語辞典編集部/小学館) 『大辞林 第三版』(松村明・編/三省堂) 『NHKことばのハンドブック第2版』(日本放送協会放送文化研究・編/日本放送出版協会)
「「愛苦しい」という言葉はなかった!? 間違って使われやすい漢字や言い回し」のページです。デイリーニュースオンラインは、誤用漢字間違いカルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る