トライアウトの裏側…プロ野球「戦力外通告を受けた男たち」密着ドキュメント (3/4ページ)
一方、プロ入り5年未満で早々に見切りをつけられた若手の中には、ルーキーイヤーの13年に、広島・前田智徳に痛恨のデッドボールを当てて、大バッシングを浴びた左腕、江村将也(ヤクルト)や、“千手観音投法”とも称された変則左サイドスローが脚光を浴びた中後(なかうしろ)悠平(ロッテ)らの姿もあった。「1年目だったから、次の日も投げたし、(デッドボールに)落ち込んでいるヒマなんてなかった。結果がついてこなかったのは、単純に僕の力不足。好不調の波が激しいのを、自分でもどうにかしようと臨んだ今年だったんですけどね」 こう語る江村は、昨季オフに決断した左ヒジのクリーニング手術の影響で大きく出遅れ、今季早くも戦力外。ようやく“まともに”投げられるまでに回復した矢先の非情な通告だった。
「一番いいときと比べると今は7割ぐらい。実戦感覚がほとんど戻ってない中で、ある程度は思ったように投げられたんで、そういう意味では悔いはないです。もちろん“これから、どんどんよくなるだろう”という手応えもありますよ」その言葉通り、自身の出番では、空振り三振を含む三者凡退。気迫の込もった投球で、「まだやれる」という気概を示してみせた。
他方、ロッテを戦力外になった中後は、3連続四死球と、かねてから指摘されてきた制球の悪さが、そのまま露呈してしまう残念な内容に終わった。「悔しいし、情けない。この甘さが今の僕のすべてです」と、うなだれた。「それまで部活としてやっていたものが、仕事に変わって、結果を求めるあまりに悪循環に陥ってしまった。結果が欲しすぎて、無用な緊張をしてしまう。結局は自分のメンタルの弱さが原因だと思います」
入団時は、1位指名ではなかったことに憮然とした表情を見せたほど。デビュー戦では、1死満塁を2三振で切り抜ける新人離れした強気なピッチングも披露し、藤岡貴裕、益田直也と同期の新人3人で、お立ち台に立つこともあった。だが、その後は苦悩の連続。勝ち気な発言とは裏腹に、驚くほどに繊細だった彼のハートは、プロとしての重圧をはねのけることができずに、この日を迎えることになったのだった。
なお、参加者の少なかった野手では、未来の“和製大砲”としてファンからは絶大な人気を誇った鵜久森淳志(日本ハム)が注目を集めた。