トライアウトの裏側…プロ野球「戦力外通告を受けた男たち」密着ドキュメント (4/4ページ)
その他では“支配下登録”にこだわり、育成での再契約という条件を自ら断ってトライアウトに参加した白根尚貴(ソフトバンク)と、NPB復帰を目指して、今季はBCリーグ・福島でプレーしたヤクルトの元育成、佐藤貴規の好対照な2人が、ともに猛打賞と気を吐いた。「もう1年あったら、ホークスでもチャンスはつかめたかもしれない。でも、どのみち最後のシーズンになるなら、自分で動いて、自分の決断で“どこにも入れませんでした”となるほうが後悔せずに済む。支配下で入った以上は、終わるにしても支配下にこだわって終わりたかったんです」
こう語った白根は、“山陰のジャイアン”と呼ばれた高校時代とは別人のような精悍な面持ち。聞けば、たび重なる怪我や手術を経験している間に、100キロ以上あった体重は一時78キロにまで落ちたという。「でも、そのおかげでスイングはより鋭くなったし、持ち味の長打を生かせるようにもなった。4年目の今季を一つの区切りに、大卒1年目のつもりでやれたらと思っています」
トライアウトから10日を経た11月20日現在、高校の先輩でもある梶谷隆幸のいるDeNA入りが発表されたこの白根を含め、次の所属先がすでに決まっているのは、先の鵜久森(ヤクルト)、山内壮馬(中日→楽天)、金伏ウーゴ(ヤクルト→巨人育成)のわずか4名のみ。10名以上が合格した昨季と比べても、トライアウトは、いっそう狭き門となりつつある。
「受けるかどうかをずっと迷っていたんですけど、ドラフトの候補に挙げられていたチームメイトたちが指名されずに落胆している姿を見て、彼らの分まで僕が頑張ろうと思ったんです」 そう言って、2年連続でのトライアウト挑戦を決めた佐藤は、実兄・由規(ヤクルト)の助言でBCリーグに活路を求め、今季は打率3割2分6厘と福島の主力として活躍。「一時は諦めかけた野球を続けてよかった」と振り返った。
だが、今のところ、そんな熱い想いを秘める彼自身に手を差し伸べる球団はなく、兄の由規も、来季は育成契約に“格下げ”というのが現実でもある。選ばれし者たちだけがスポットライトを浴びる、プロ野球という厳しき世界。明暗の分かれた彼らの、これからにも注目したい。