【プロ野球】清原・金本はランク外?球界の”ケンカ番長”は意外すぎるあの男だった!
かつて雑誌の企画で、数名のプロ野球OBに次のような質問をした。
「プロ野球界の“真の番長”とは誰か」
質問前に想定していたのは大沢啓二氏(元日本ハム監督)、金田正一氏(元ロッテ監督)、清原和博氏(元巨人など)の3名だった。
大沢監督といえば「親分」の相性で親しまれており、番長の風格は十分。金田監督もハチャメチャなイメージがあり、番長のニオイを感じさせる。そして清原氏は文字通り「番長」のニックネームをもっていた選手だ。
しかし、誰に聞いてもこの3人の名は挙がらなかった。こちらが名前を挙げると、
「大沢さんは番長というタイプではない」
「カネやんは単にハチャメチャなだけ」
「清原はケンカ早いイメージがあるけど、死球に怒ってバットを投げつけた際、逃げ回った。あれでは番長とは言えない」
という答えが異口同音に返ってきた。
そんな中、唯一イメージと一致したのが星野仙一氏だった。
「現役時代、交代を打診しにきたピッチングコーチを『交代などするか!』と怒鳴りつけた。それでも交代させられるとベンチの壁を殴っていた」
「監督になっても血気盛んで、巨人戦に負けるとバスの中が通夜状態。中途半端なピッチングを目にすると、怒りで湯呑茶碗を叩き潰した。いつも粉々になるので、気が付くと茶碗がプラスチックになっていた」
などなど、これでもか、というほどのエピソードを耳にした。テレビでは笑顔を振りまいていたが、グラウンドでは文字通り「燃える男」だったようだ。
ドスの効いた「野球できへん身体にさすぞ!」
「番長」を定義づけておくと「風格」「リーダーシップ」「人望」を兼ね備えており、「この人には逆らえない」と感じる人物である。
「逆らえない、といえば根本陸夫(元ダイエー監督)さんだね。笑顔のときも目の奥は笑ってないし、得も言えぬ怖さがあった」と、あるOBが言う。策士のイメージが強いが、番長というに相応しい存在だったそうだ。
意外だったのが元広島監督の古葉竹識氏だ。温厚なイメージで紳士の香り漂うが、「相手ベンチをヤジっていると、そばにやってきて『やめておけ』と。たった一言だけどビビった。おとなしそうにみえて、肝っ玉が座っている」と、あるOBは語ってくれた。
その他、土井正博氏(元近鉄)、大杉勝男氏(元ヤクルト)、有藤通世氏(元ロッテ)などの名前も挙がる中、誰もが口にした「真の番長」といえば、「喝!」でおなじみの張本勲氏(元巨人)だった。
「乱闘が起こると、しばらく静観した後に『やめろ!』と一喝。その声で乱闘がピタリと止まった。それでも乱闘が収まらないと『おまえら野球できへん身体にさすぞ!』と。これで何度も騒ぎが収束した」(あるOB)
学生のとき、ワルの間で伝説が大きくなるのも番長である。いわば風説が独り歩きするわけだが、張本氏の場合も同様で「事務所に名札があった」「立派な“絵”をお持ちだった」「移動のバスで絶対に窓際に座らなかったのはヒットマンの襲撃を防ぐため」など、選手の間でウソか本当かわからぬ話が語られていたという。
日本一の安打数を誇るバッターは、球界一、肝の座った人物でもあったようだ。
- 小川隆行(おがわたかゆき)
- 編集者&ライター。『プロ野球 タブーの真相』(宝島社刊)シリーズなど、これまでプロ野球関連のムックを50冊以上手がけている。数多くのプロ野球選手、元選手と交流がある