『平和元年』 元ちとせ #3 こぶしがないと、私じゃない (1/2ページ)
元ちとせといえば、声とこぶしだ。なにを歌っていても、元ちとせだとわかる。でもそのこぶしをプロになる間際、彼女は封印していた。
「デモテープを作るのにレコード会社の人に勧められたJ-POPの曲を歌ったんです。でも最初はこぶしを使いませんでした。あれは島の伝統のものだから、私が勝手に商売に使っちゃいけないと思っていたんです。でもこぶしを使わずに歌うのはとても大変で、歌ったという手応えがないんです。棒読みみたいな、心が出ない歌になっちゃう。事務所の社長には“面白くないなー”って言われちゃうし」
こぶしを解禁したのは、まさにその時だ。
「すごくテンポの速い曲を歌うことになって、ついつい、使ってしまったんです。するとそこで初めて、“歌えた!”っていう気がしました。社長に良いね、と言ってもらえたし、やっぱりこれが自分の歌い方なんだと思いました」
こぶし、恐るべし。
「島唄のこぶしって、みんなそれぞれ自分で作るものなんです。ですから島唄の特徴ではあっても、私のこぶしは私のもの。それからは、思う存分、こぶしを使うことにしました」
1979年鹿児島県奄美大島生まれ。2002年『ワダツミの木』でデビュー。 リリース後『100年にひとりの声』『その声は涙でできている』と讃され彼女の歌はまたたく間に大ヒット、社会現象となる。チーフタンズ、スライ&ロビー、ディープ・フォレスト、坂本龍一、松任谷由実など大物アーティストとのコラボも大きな話題となる。そして昨年発表したアルバム『平和元年』は企画コンセプトに賛同した吉永小百合が題字をプレゼントしてくれた。現在は生活の拠点を奄美大島におきながら、全国各地でのワンマンライブやイベントコンサートなど精力的に活動している。2月19日浜離宮朝日ホールにてライブを開催予定。