【永田町炎上】元政策秘書が見た「甘利辞任」の真相と政治家の口利きビジネス

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辞任を惜しむ声もあるが(World Economic Forumより)
辞任を惜しむ声もあるが(World Economic Forumより)

【朝倉秀雄の永田町炎上】

■優秀な秘書が行う口利きビジネスの実態

 およそ「悪事」を働かない国会議院などいない。それが筆者の17年間の政策秘書経験に基づく持論だ。案の定、甘利明経済再生担当相が1月28日、「政治とカネ」の問題で辞任に追い込まれた。衆院当選11回の大ベテランにして菅官房長官や麻生副総理兼財務省とともに安倍内閣の要であった甘利大臣を退任に追い込んだのは『週刊文春』のスクープだった。詳しくは同誌の記事や新聞などの後追い報道を参照していただくとして、今回は政治家と秘書、そしてカネの問題を論じてみよう。

 国会議員なら誰もがカネは一円でも多く欲しいのが本音だ。だが、欧米のように寄付文化の発達していない我が国では、何の得もないのに献金をするような酔狂な御仁はまずいない。たいていは見返り目当てだ。つまり「陳情」という名の「頼み事」をして、結果が出た場合か、この議員とつきあっていれば、いずれ何らかの“得”があると算盤を弾いた者だけが献金する。

 むろん国会議員やその秘書が公務員や国または地方自治体が半分以上を出資する団体の役職員に「口利き」をして報酬をもらえば、「あっせん利得罪」に問われる可能性があるが、そんな法律は誰も守らないのが永田町の常識(?)だ。そんなわけで「陳情処理」という名の「口利きビジネス」は自民党議員の事務所では日常業務として定着している。何も甘利事務所だけが特殊なのではない。

 筆者も17年間の政策秘書生活で何百件もの「口利き」を手がけたが、何より心がけたのは、依頼者の身元と財力、それと背後関係の調査の徹底だ。カネのない相手だと、苦労して目的を叶えてやっても報酬を踏み倒されてしまう恐れがある。依頼者の背後に野党や現政権を快く思わない勢力、ヤクザ、右翼、エセ同和などタチのよくない「闇社会」の人間が蠢いていて、ワナを仕掛けられないとも限らない。

 特に金銭の受け渡しは、証拠を残すと命取りになるから、細心の注意を払わなければならない。当然、出入りの記憶が残り、検察に押さえられたら言い逃れができない「大臣室」や「議員会館」などではなく、口の堅い「料亭」などの密室で行うのが鉄則だ。また今回の告発者の一色氏ごとく、下手をすると、会話を録音しておき、後で“商売”に利用しようとする不埒な輩もいるから、「ポケットのものをすべて出して見せてくれ。話はそれからだ」と言って、身体検査をし、問題がないのを確認してからでなければ「陳情」には応じないのが秘書の心得というものだ。

『週刊文春』のライバル誌の『週刊新潮』によれば、一色氏は過去に右翼団体の「総括参謀」などという大げさな肩書きを名乗り、勝手に「国際人権教育推進センター副理事長」の名刺を振りかざしていたという。だが、後のほうの理由は察しがつく。「人権教育」という文字が相手に同和関係者を想像させ、エセ同和行為を働くのにすこぶる便利に機能するからだ。

 もし『週刊新潮』が伝える一色の経歴が事実ならば、実態は正義を持たず、口先三寸で世渡りする「事件師」あるいは「政治ブローカー」といった類の人種のように思える。だから、一人前の秘書なら、そんな胡散臭い人物が近づいてきたら、警戒して相手にしないのが普通だろう。甘利事務所の秘書連中は、金銭や接待をタカったというのだから、あまりにも軽卒通り越して、「間抜け」という他ない。ましてや、金銭の受け渡し現場は週刊誌に撮影されるなどおよそバカげてる。

■自民党の大物代議士が黒幕なのか

 筆者も政策秘書になる前は千葉県庁の職員として12年間ほどお世話になったから、事件の舞台となった白井市の土地柄や薩摩興業の実態についてはある程度、わかっているつもりだ。同地は、関西圏に似た産業廃棄物の不法投棄などが多い土地柄だ。『週刊新潮』が掲載している薩摩興業の航空写真を見てもわかるように、周囲に人家はなく、汚いプレハブ造りの事務所に資材が散乱するだけだ。おまけに敷地の地下には産業廃棄物が埋まっているという。実はそれを不法投棄した地主(故人)は、その件で過去に逮捕されている。そんな土地の上に事務所を構える会社がいったいどんな性質の会社なのか、おおよそ察しが着こうというものだ。筆者の後輩の秘書はこう語った。

「いまは和解していますが、過去に千葉県の土地を不法占拠しています。おそらく都市計画道路ができるのを知って、県から委託を受けたURに言いがかりをつけて補償金を巻き上げるために隣接地を借り受けたのでしょう。それだけを目的に存在するようなもので、とてもまともな建設業者とは言えませんよ」

 そんな怪しげな会社と関わりを持った甘利大臣自身も脇が甘すぎるのではないだろうか。

『週刊新潮』によれば、一色氏は甘利大臣の後援会なるものの立ち上げに際し、出席しなかった白井市長や白井選出の県会議員の田中某に「因縁をつけた」というのだが、それが事実なら、根っからの「恐喝体質」なのであろう。自民党の高村副総裁は「罠を仕掛けられた感がある」と語っているが、筆者も同感だ。

 そもそも一色氏のような人物が何の得もないのにURとの交渉など引き受けるわけがない。おそらく薩摩興業からそれ相応の報酬を得ようとしたのであろうが、思うように補償金交渉が進まず、趣旨替えして、安倍政権を快く思わない勢力に話を持ち込み、唆れて『週刊文春』を利用したのではないか。安倍政権に揺さぶりをかけようとした可能性も否定できない。おそらくそれは野党などでなく、ヤクザや右翼、エセ同和などの「闇社会」の人間と繋がった自民党の引退した大物議員ではないかというのが筆者の“空想”だ。

朝倉秀雄(あさくらひでお)
ノンフィクション作家。元国会議員秘書。中央大学法学部卒業後、中央大学白門会司法会計研究所室員を経て国会議員政策秘書。衆参8名の国会議員を補佐し、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理にも携わる。現職を退いた現在も永田町との太いパイプを活かして、取材・執筆活動を行っている。著書に『国会議員とカネ』(宝島社)、『国会議員裏物語』『戦後総理の査定ファイル』『日本はアメリカとどう関わってきたか?』(以上、彩図社)など。最新刊『平成闇の権力 政財界事件簿』(イースト・プレス)が好評発売中
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