全世界で1兆円市場!急成長中の「クラウドソーシング」最新事情
出社する必要もなく、専門分野を生かしながら自分のペースで仕事に臨める「クラウドソーシング」が話題を呼んでいます。
『クラウドワーキングで稼ぐ! ―時間と場所にとらわれない新しい働き方』(吉田浩一郎著、日本経済新聞出版社)は、日本最大級のクラウドソーシングサービスとして知られる「クラウドワークス」の創業者。
クラウドソーシングに関する第一人者として、このビジネスの可能性を本書で明らかにしているわけです。
とはいえ、クラウドソーシングについて漠然とわかってはいても、まだまだ知識が足りないと感じている方も少なくはないはず。
そこで改めて、このビジネスの可能性についておさらいしてみましょう。
■クラウドソーシングの意味
「クラウド」は「群衆(crowd)」で、「ソーシング」は「外部委託(outsourcing)」の意。クラウドソーシングとは、この2つを組み合わせた造語です。
2005年にこの考え方を初めて提案したのは、米「WIRED Magazine」の編集者・ライターであるマーク・ロビンソン、ジェフ・ハウの両氏。クラウドソーシングについては、
「従業員によって行われている機能を、ウェブ上に開かれた外部ネットワークを通して、世界中の群衆(crowd)へ委託(sourcing)すること」
と定義しているそうです。クラウドソーシング、つまり業務を委託する主体は当然ながら企業ということになります。
■クラウドワーキングの意味
同じく注目しておきたいワードが、業務を委託される側の立場に立った「クラウドワーキング」。
ちなみにこちらの「クラウド」は、クラウドソーシングの「群衆(crowd)」ではなく、「雲(cloud)」のこと。
これはIT業界で使われている「クラウドコンピューティング(cloud computing)」の略称。いうまでもなく、さまざまなデータをインターネット上に保存するサービスです。
著者によれば、クラウドソーシングとクラウドワーキングは、コインの表裏のような関係。
大まかに説明すれば、前者の視点は「企業」であり、後者の視点は「個人」。
クライアントである企業が、受注者としてのクラウドワーカー(おもに個人)に対して仕事を依頼する「群衆(Crowd)+外注(Sourcing)」の関係がクラウドソーシング。
そしてクラウドワーカーが、クライアントに対して業務実行・納品を行う「雲(Cloud)+働く(Working)」の関係がクラウドワーキング。
■世界の市場は1兆円規模へ
当然のことではありますが、クラウドワーキングが成立するためには、「企業がどれだけ仕事を依頼するか」というクラウドソーシングの市場規模が重要な意味を持つことになります。
なお、その点について参考になるのが海外の事例。なぜなら欧米ではすでに、クラウドワーキングが広く浸透しているからです。
そして、それを立証するものとして著者は興味ふかいエピソードを引き合いに出しています。
2014年春に開催されたカンファレンス「クラウドソーシング・ウィーク(Crowdsourcing Week)」においての、当時のElance(イーランス)による役員による講演のこと。
驚くべきことにその方は、2015年にはクラウドソーシングの世界市場が1兆円規模に達しているだろうと予測したというのです。
事実、この見通しは正しいものになりつつあり、世界的な視野で捉えた場合、角国でクラウドソーシングサービスが急速に広がっていることが実感できるのだといいます。
■国内でも市場が急成長中!
そうなると、気になってくるのは日本の状況。
この点について矢野経済研究所は、2015年に650億円、2018年には約1,820億円まで成長すると予想しているのだとか。
およそ3年程度の期間で、一気に2,000億円規模にまでふくらむと指摘しているわけです。
また、業界の活性化と健全な発展に貢献することを目的として、クラウドソーシング大手各社が立ち上げた「一般社団法人クラウドソーシング協会」の中長期予測によれば、8年後の2023年には国内市場もおよそ1兆円程度まで成長するだろうという試算結果が出たというのです。
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つまり、これがクラウドソーシングの可能性。インターネットの普及と足並みを揃えてワークスタイルが刻々と変化していくなか、この動きには大きく注目する必要がありそうです。
(文/書評家・印南敦史)
【参考】
※吉田浩一郎(2015)『クラウドワーキングで稼ぐ! ―時間と場所にとらわれない新しい働き方』日本経済新聞出版社