そもそも必要ないはずなのに……禁煙の飛行機のトイレに「灰皿」があるのはナゼ?
公共施設を始め、カフェやレストランにも見られるようになった「禁煙」。そんな時代の流れに反し、飛行機のトイレには、いまだに灰皿が設置されているのはご存じでしょうか?
機内が全面禁煙になったいま、トイレ内での喫煙ももちろんNG。違反すると50万円以下の罰金が科せられるだけでなく、途中の空港に緊急着陸なんて事態を引き起こしてしまいます。それでもトイレに灰皿があるのは、吸い殻を便器に捨てると火事になる可能性があるから。万が一にも吸っちゃったひとが大惨事を起こさないための「安全装置」だったのです。
■つい一服は「安全阻害行為」
レストランや居酒屋でも分煙、つまり喫煙/禁煙席を分けているお店が増えていますが、少し前までは交通機関でも喫煙OKなものが多くありました。飛行機もそのひとつで、おもに後方が喫煙席でしたが、密閉された機内だけに煙の処理がタイヘン……そんな背景もあり、20年ほど前に全面禁煙となりました。
ところが飛行機のトイレには、いまだに灰皿が設置されているのはご存じでしょうか? 喫煙可だったときの遺産? と、気にかけないひとも多いでしょうが、じつは意図的に残されたもの。灰皿がないといけないルールが存在するため、最新鋭機にも装備されているのです。
トイレならタバコOKの意味なのでしょうか? 文字通り「全面禁煙」ですからトイレでも喫煙NGですが、ガマンできずに一服しちゃうトラブルもしばしば。そこで2004年からは、イレ内での喫煙は「安全阻害行為」として厳しく処罰されることになりました。
もし違反すると、まずは機長からの「禁止命令」、その後も続けると50万円以下の罰金が科せられます。それでも従わなかったり不服だからと暴れたりすると、
・出発地か最寄りの空港に緊急着陸
・身柄の拘束
・警察へ通報
と、厳しい処分が待っています。タバコ以外にも、シートベルトをしない、携帯などの電子機器を使うも同様で、処罰はもちろん、ほかの乗客に大迷惑になる可能性もあるのでご注意を。
■ 汚物タンクは火気厳禁
タバコを吸ってはいけないのに、灰皿があるのは矛盾ですね。じつはこれ一種の安全装置で、万が一タバコを吸っちゃったとしても、吸い殻を便器に捨てないための工夫。灰皿がないと国際基準を満たせないのです。
家庭用のトイレは水で「流す」のに対し、飛行機のトイレは吸引式と呼ばれ、気圧を利用してタンクが汚物を「吸い取る」仕組み。身近なものに例えるなら、掃除機で処理するような構造になっています。大量の水を積まずに済むのがメリットですが、同時にタンク内が水で満たされているわけではありません。もし火のついた吸い殻を捨てると、タンク内の紙に引火し、火災になる恐れがあるのです。いまだにトイレに灰皿があるのもこれが理由で、本来は喫煙してはいけないが、「万が一」吸ったひとがいても火を安全に消せるように設置されているのです。
灰皿があるから一服した結果、乗っていた飛行機が火災……ではシャレになりませんので、ガマンできるか自信がないひとは、アメやガムをたくさん用意しておくと良いでしょう。
ボン・ヴォヤージュ(良い旅を)!
■まとめ
・機内での喫煙は「安全阻害行為」
・喫煙すると罰金50万円、ヒドい場合は身柄を拘束されることも
・飛行機のトイレは「吸引式」のため、タンク内には乾いた紙もある
・トイレの灰皿は、タンクで火事が起きないための「安全装置」
(関口 寿/ガリレオワークス)