投稿前の小説をまちがえて消去してしまった作家 (2/4ページ)
――「成長」とか「友情」のような、一般的な青春小説の要件を避けているようにも感じられます。
青木:正面から青春小説を書くのはちょっと分が悪いというか……(笑)。
――そんなことはないですよ!しかし、「青木淳悟=ヘンな小説を書く作家」という評価は定着しています。ご自身で「ヘンな小説」を書いている実感はありますか?
青木:「スキマ産業」的に書いているなとは感じています。ジャンルというものがあるとすると、そこからちょっと外れるものを、とは思っていますね。それが書きやすいですし、これからもそういうものを書いていきたいです。
――そうした作風のルーツはどこにあるのでしょうか。
青木:「ルーツ」といえるのかはわかりませんが、大学1年生の時に大江健三郎さんの小説が好きで読んでいて、「大江文体」を目指して小説を書いたことがありました。
思えばそこが「小説を書く」ということのスタート地点だったのですが、それから海外文学や日本の現代文学の作品を読みながら少しずつ吸収していったんじゃないかと思います。
――大江文体を目指すというのは楽しそうですね。
青木:小説を書くこと自体はじめてでしたから、書くこと自体への感動もあって結構スピーディに書けたんですよ。1カ月で100枚くらい書いて、それを「新潮新人賞」に送ろうと思っていたんですけど、送る前日に原稿のデータをまちがえて消してしまったんです。
――それはショックですね。もしかしたらそれがデビュー作になっていたかもしれないのに。
青木:いや、受賞するかどうかでいえば全然問題にならないような小説だったと思います。ただ、そこから急に書けなくなってしまって、大学2年、3年はほとんど何も書けませんでした。
当時、自分に似た主人公をつくって、身近な日常を書くということをやっていたのですが、生産性がないというか、短編を3つか4つ書いたくらいで壁にぶつかっていましたね。それもあって4年生くらいから書き始めた『四十日と四十夜のメルヘン』では、自分からちょっと離れたものを書こうとしていて、結果的にそれがデビュー作になりました。