投稿前の小説をまちがえて消去してしまった作家 (3/4ページ)
作品の出来と関係あるかはわかりませんが、その頃は就職活動もせず、「自分はこれからどうするんだろう」という不安もあって尻に火がついた感じでしたね。そこでようやく「小説は何をやってもいいんだ、どう書いてもいいんだ」という心境になれた気がします。
――その『四十日と四十夜のメルヘン』が新潮新人賞を受賞してデビューされました。書いた時の手ごたえとしてはどうだったんですか?
青木:全然手ごたえはなくて、雑誌に掲載される選考の途中経過も見ていませんでした。ダメだろうと思って次の作品を書いていましたから。
でも、最終選考のひと月くらい前に編集者から電話がかかってきて、最終候補に残っていることを知ったという感じです。
今回の加筆もそうなのですが、僕は「修正魔」みたいなところがあって、原稿を直したくなってしまうんですよ。『四十日と四十夜のメルヘン』は単行本になる時と文庫になる時でそれぞれ結構直していて、3バージョンくらい世に出ているのですが、実は厳密に言うと最終選考の前にも直して差し替えてもらったので、実際にはもっとたくさんあります。
――青木さんが人生で影響を受けた本がありましたら、3冊ほどご紹介いただければと思います。
青木:(青木さんのご回答が入ります)まず中学生のころ司馬遼太郎にどっぷりと浸り込んでいて、将来は時代小説作家になりたいと思っていたんです。司馬ファンとして1冊だけ選ぶのはなかなか難しいところですが、忍者小説の『梟の城』(新潮文庫)が忘れがたい。これがデビュー作で直木賞を取っていますが、ちょっと読み返そうかと思って本を開いたら面白すぎて読みやめられない。いきなりこんなプロフェッショナルな仕事をしているなんてスゴすぎて、夢を諦めてよかったなと思います(笑)。
2冊目がスティーヴン・キングの『トウモロコシ畑の子供たち』(扶桑社ミステリー)。これは久しく絶版になっていると思いますが、高校時代に出会いました。スリラーというのかモダン・ホラーというのか、またエンターテインメントの完成度の高さにやられてしまうわけですが、密度の濃い傑作ばかりの短篇集です。「英米文学」より先にこういうものを読んでいたことを思い出しました。絶版なのが本当に疑問で、超オススメです。