割増率はいくら? 社会人なら知っておきたい残業代の計算方法

フレッシャーズ

残業代は、残業時間を申告すると会社が自動的に計算してくれます。就業規則があればそこに計算方法が書かれています。しかし、会社が残業代の計算をごまかすようなことも可能性としてはゼロではありません。残業代をごまかされないためにも、また社会人としてビジネス上の常識として残業代の計算方法を理解しておく必要があります。そこで今回は、残業代を正しく計算するための基礎知識と計算方法を説明します。なお、以下の説明では一般的な労働時間制での残業代の計算方法について説明しています。


■残業代の計算は簡単 だけど正確な計算にはしっかりした知識が必要

残業代は、残業時間×1時間当たりの残業代で計算できます。しかし、残業時間の計算方法や、残業代の割増率がどのように決められているのかを知らないと計算できません。そこで、まずは残業時間の計算方法や割増率について説明します。

■残業時間は法定外残業と法内残業の2種類があることを知ろう

残業時間には、まず2つの種類があることを理解しましょう。労働基準法は、原則1日8時間、かつ1週間で40時間をこえて労働してはならないこと。また、1週間に1日あるいは4週で4日以上の休日が必要と定めています。この制限をこえて行う労働は「法定時間外労働」と言い、労働基準法が定めた残業時間(法定外残業時間)になります。

一方、会社が、例えば1日の労働時間は7時間、1週間で35時間、1週間の休日は2日と定めているとします。この労働時間は「所定労働時間」と呼ばれ、就業規則や労働契約で会社ごとに決められています。
このとき、1日のみ9時間働いたとします。すると、残業時間は2時間となり、労働基準法の残業時間を1時間上回ります。この2時間の内、労働基準法の「法定時間外労働」にならない1時間は「法定内残業」または「法内残業」と言います。労働基準法では、割り増しされた残業代の支払い義務があるのは、「法定時間外労働」の時間分だけとなります。
つまり、法的には、「法定内残業」には割り増しされた残業代の支払い義務はないことになります。会社によっては、この「法定内残業」についても割り増しされた残業代を支払うか、支払う場合にいくら支払うかは自由に決めて良いことになっています。そのため、法定外残業時間1時間、法定内労働時間1時間分の残業代が発生し、2つの残業代で金額が異なる可能性があります。

法定労働時間と所定労働時間が異なる場合、2つの残業時間の違いを知っておく必要があります。残業代の計算だけでなく、この知識は社会人として、ビジネス上の常識として理解しておきたい内容です。

■1時間当たりの割り増し残業代は残業した時間帯、休日によって変動

次に、1時間当たりの残業代の割増率は、時間帯と休日によって変動します。労働基準法は残業代の割増率を以下のように定めています。

割増率
・深夜休日を除く法定外残業時間 1.25倍以上 1日8時間、週40時間をこえ、深夜、休日を除く残業時間
・深夜の法定外残業時間 1.5倍以上 法定労時間をこえ、かつ深夜22時から翌朝5時までの労働時間
・休日の法定外残業時間 1.35倍以上 法定休日の日の深夜を除く残業時間
・休日の深夜の法定外残業時間 1.6倍以上 法定休日の日の深夜の残業時間
・1カ月60時間をこえた残業時間 1.5倍以上 1カ月60時間をこえた深夜、休日を除く残業時間
・1カ月60時間をこえた深夜残業時間 1.75倍以上 1カ月60時間をこえた深夜残業時間

ただし、1カ月60時間をこえた場合の割り増しは2016年現在、大企業のみで適用されており、中小企業は今後導入の予定です。

上記の割り増しされた残業代は、法定労働時間をこえる残業時間に対して適用されます。法定内残業時間に対して、いくら支払われるかは、会社ごとの就業規則などで確認しなければなりません。なお、もし勤務時間が午後の3時から深夜12時(内休憩1時間)までという勤務時間帯であったとします。この場合、残業でなくても夜の10時から12時までの2時間は割り増しされた給与が支払われます。このときの割増率は1.25倍以上です。

■割り増し残業代の基準となる時間あたりの基準残業代の計算方法

残業時間と残業時間に対する割増率は分かりましたが、時間当たりいくらの残業代に対して、割増率が掛けられるのかその基準残業代がわからないと残業代が計算できません。時間あたりの残業代は、月額の給与額を1カ月の労働時間で割り算して求めます。このときの月額の給与額と1カ月の労働時間はどうやって求めるのかが明確にならないと、アルバイトやパートのように給与が時間給ではないため計算できません。

給与は通常、基本給に加えて諸手当が労働時間とは関係なく1カ月単位で支払われます。1カ月の給与額は、支給額すべてが対象になるのではなく、労働基準法で、諸手当の内、以下の手当は除外賃金と呼ばれ、割増賃金を計算するときの給与額には含まれません。月額の給与から以下の諸手当の金額を控除した金額となります。毎月支払われる皆勤手当や資格手当などは控除しないで計算しなければなりません。
・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子ども養育手当
・住宅手当
・臨時に支払われた賃金(好決算のときに支払われる一時金など)
・1カ月をこえる期間ごとに支払われる賃金(賞与、特別手当など)

次に分母の労働時間は、以下の計算式で求めた時間が使われます。

1カ月の労働時間=(365日-年間の休日総日数)÷(12×1日の所定労時間)

うるう年の場合は、365日ではなく366日で計算します。この計算で得られた月額給与を労働時間で割った残業代単価に、残業時間と残業した時間帯、休日によって適切な割増率を掛けることで残業代が計算できます。

標準的な労働時間制における残業代を計算する基礎となる残業時間の種類、残業代の基準単価・労働時間について、労働基準法の規定を説明しました。これにより、残業代を正しく計算できます。労働基準法に関係する知識は社会人として、またビジネスを進める上での必要な知識ですから、正しく理解しておきたいですね。

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