北の強制募金は富裕層の「お守り」 (2/2ページ)
断れば自分のメンツに傷がつき、どんな目に遭うかわからないのでいやいやながらも募金を払っていたが、額は年間数万元(1万元は約17万5000円)だった」
今回の70日間強制募金戦闘に限らないが、なぜ北朝鮮ではありとあらゆる名目で募金が強制されるのだろうか。それは北朝鮮の抱える構造的な問題のせいだ。
4月1日は、北朝鮮では「税金制度廃止の日」だ。1974年3月21日に最高人民会議法令「税金制度を完全になくすことについて」が発表され、4月1日に世界初の税金のない国になったことを宣言した。
2014年3月29日の朝鮮中央通信「税金のない国、朝鮮」という記事では「税金制度の完全な廃止は、金日成主席の人民愛の輝かしい実現」「主席がチュチェ思想を具現した朝鮮式社会主義を建設する道で積み上げた不滅の功績」などと報じている。
しかし、現実は全く違う。使用料、募金などの名目で、法的裏付けのないカネが税金のような形で、頻繁に徴収されるのだ。
「遺訓政治」が国是である北朝鮮では、金日成氏、金正日氏の過去の政策に問題があっても、公式に撤回することはできない。そんなことをすれば金正恩氏は「祖父と父の政策に歯向かうとんでもない孫」と批判されかねないことから、募金などの「非公式の税金」を徴収せざるを得ないといういびつな形になっている。
北朝鮮の人々は、税金のない国に暮らしながら、税金に苦しめられているのだ。