北の強制募金は富裕層の「お守り」 (1/2ページ)

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北の強制募金は富裕層の「お守り」

5月に開催予定の朝鮮労働党大会に向けて「70日間戦闘」を行っている北朝鮮で、当局が住民から募金を募っている。開催資金集めの一環であり、大会で成果として示す都市整備事業の資金でもあるが、事実上の「強制募金」だ。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、最近中国を訪れた咸鏡北道(ハムギョンブクト)の住民の証言を引用して、「70日強制募金戦闘」の実態について詳しく伝えた。

「会社では上司から、つとめていない住民は人民班(町内会)の班長からしつこく『募金を出せ』と言われる。当局は額を決めていないため、個々人の財布事情に合わせながら、また周りの人より少なくなったり多くなったりしないように、よく見てから額を決めている」

北朝鮮庶民にとっては、なけなしのカネを搾り取られるとんでもないキャンペーンだ。反面、ドンジュ(金主、新興富裕層)にとっては「絶好のチャンスになる」と語るのはRFAの別の情報筋。

「大規模ビジネスを展開するドンジュは、金正恩第1書記への忠誠心を見せるために多額の募金を行う。それに対して当局は『募金証書』を発行。これが『お守り』として経済活動に大きな効力を発揮する」

自宅で、募金証書を額縁に入れ、金日成氏・正日氏の肖像画の下に掛けておくと、調査名目で保衛部(秘密警察)や保安署(警察署)の係員がやってきても、特に何もせずに帰っていくというのだ。

そもそも、ドンジュに限らず、北朝鮮で大掛かりに商売をするには、様々な法律を犯さざるをえない。警察からすると「ツッコミどころ満載」だが、「募金証書」があると、多額の募金をしている、つまり幹部とのコネがあると思われる。下手に調査すれば、自分が不利益を被るかもしれないので、警察官もすごすごと引き下がらざるをえないという仕組みだ。

「70日間強制募金戦闘」には、北朝鮮に駐在している外国人も参加させられる。黄海道(ファンヘド)で3年間に渡って石材鉱山を営んでいた中国人実業家は語る。

「何か大きな行事がある度に、北朝鮮の合弁相手から『募金に協力して欲しい』と圧力を掛けられる。
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