秋津壽男“どっち?”の健康学「住む場所によって寿命が変わるって本当?寒さによるストレスで自ら命を絶つケースに地域差も…」 (1/2ページ)

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秋津壽男“どっち?”の健康学「住む場所によって寿命が変わるって本当?寒さによるストレスで自ら命を絶つケースに地域差も…」

 春は、出会いと別れの季節です。転勤や引越しなどで、新しい土地で生活を始める方も少なくないでしょう。

 中には、リタイア後の田舎暮らしに向けて準備する人もいることでしょう。そこで、今回はこんなお題を出してみます。

「定年後の田舎暮らし。暖かい地方と寒い地方、どちらがより長生きできるか」

 寿命を考えるうえで重要なのは、年間を通じての平均気温です。人間は極端な寒暖や湿度に対してストレスを感じます。特に、寒冷地の厳しい寒さは生命にも関わります。北海道では、冬になると毎年のように、凍死のニュースが聞かれます。つまり、寒ければ寒いほど、ストレスを感じるのです。

 一方、温暖な地域では、凍死するようなリスクはありません。沖縄や九州に上陸する台風のような「天候リスク」でも、寒冷地の冬の寒さが数カ月間に及ぶのに比べて、大きな台風ですらせいぜい数日間だけで、体へのストレスはそれほど大きくありません。

 また温暖な地域では、野宿も可能なばかりか、自生する食物で自給自足の暮らしをしているケースすらあります。

 寒い地方では、そうはいかないのは言うまでもありません。冬場の食料を自力で調達せねばならず、暖を取るための灯油が切れたら家の中でも凍死してしまいます。加えて、寒冷地の冬の期間の暖房費は、暖かい地方の何倍もかかり、経済的な負担も大きくなります。

 さらに、日照時間も人間のメンタルに大きな影響を与えていると言われています。

 厚生労働省が公表している都道府県別の自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)でも、全国ワーストの常連は、秋田県と岩手県で、いずれも冬場の日照時間が全国平均よりも短いことで知られています。

 一般的に、寒さは人間をネガティブな気持ちにさせるばかりか、気づかないうちに大きなストレスがかかっています。「寒い、ひもじい、もう死にたい」という感情の連鎖から、人間は自殺を考えてしまうのです。

 こんな話があります。自殺志願者に自殺を踏みとどまらせるために、暖かい部屋に招き「明日死んでもいいから、とりあえず食べろ」と温かい鍋を食べさせるそうです。

「秋津壽男“どっち?”の健康学「住む場所によって寿命が変わるって本当?寒さによるストレスで自ら命を絶つケースに地域差も…」」のページです。デイリーニュースオンラインは、週刊アサヒ芸能 2016年 3/17号“どっち?”の健康学秋津壽男長寿日照時間社会などの最新ニュースを毎日配信しています。
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