WADAがメルドニウム陽性反応が出た選手たちの処分解除の可能性を通知

テニスデイリー

WADAがメルドニウム陽性反応が出た選手たちの処分解除の可能性を通知

 非常に多くの選手たちの処分につながったメルドニウムによる薬物違反が、劇的に変わる可能性が出てきた。最近になって禁止されたこの薬物が、どの程度の期間体内に留まるのかについて、科学的なエビデンス(※科学的に意味があるとみなされる多数の臨床試験などによる科学的、客観的な証拠や根拠のこと)が不足しているためだ。これによりメルドニウムに陽性反応を示したアスリートたちが、処分を免れる可能性が出てきた。

 ワールド・アンチ・ドーピング・エージェンシー(WADA)は水曜日の段階で、メルドニウムが禁止される1月1日より前の段階で、それを服用したとアスリートたちが確信しているのであれば、暫定的に実施されている出場停止処分が解かれると話した。

 「これは大赦というわけではない」とWADAのクレイグ・リーディー氏はAP通信の取材に対してコメントしている。

 WADAはメルドニウムに関しては禁止薬物のリストに加えられて以来、様々な競技と国に渡って172例の陽性反応が出ていると話している(多くはロシア)。もっとも有名なものではマリア・シャラポワ(ロシア)の例がある。彼女は先月の段階で1月の全豪オープンの際の薬物検査で陽性反応が出たと発表していた。

 陽性反応が出た何人かのアスリートたちは、昨年の段階で服用を停止していたにも関わらず、体内に留まっていた薬物の反応が出たものだと訴えていた。シャラポワはどのタイミングで服用を止めたのかは明らかになっていない。

 メルドニウムはラトビアの製薬会社が開発した薬物で、通常は心臓疾患のための補助薬として広く東ヨーロッパ地域で用いられている。この薬物は血流を促進し、筋肉への酸素の供給を助ける効果があるとされる。

 各国のアンチ・ドーピング機関に対してWADAは「体内にどの程度メルドニウムが留まり、排出されるのかに関して明らかな科学的な情報が欠けている」と注意を促した。

 現在、WADAが公認するいくつかの研究所で行われている予備検査の結果では、メルドニウムが体内から排出されるのに数週間から数ヵ月かかるという結果が出ているのだという。

 結果として、アスリートたちが1月1日以前にメルドニウムを服用していたとしても、体内に薬物が留まっているということを「合理的に知ることができなかったか、疑うことができなかった」という可能性があるとWADAは話している。

 「これらの状況を考えると、WADAとしては間違った根拠の元で規制をし、アスリートたちには過失がなかったと考えられる」と声明の中でWADAは述べている。

 前述のリーディー氏は、火曜日の段階で各国のアンチ・ドーピング機関にこれらに関する通告を行ったとしている。これらの情報はWADAが公式サイトに掲載する前の段階で、ロシアのアンチ・ドーピング機関によって報じられた。

 「これは我々が既知の科学によって説明されるものである」とリーディー氏はAP通信の電話取材に対して話し、「この問題は薬物が体内から排出されるのにどれくらいの時間がかかるかという問題で、我々が受けている多くの疑念をはっきりさせるための試みでもある」と続けている。

 また、別の声明において、WADAはメルドニウムは禁止薬物として指定されたままであるとし、アスリートたちから検出されるどんな薬物に対してもそれによる責任を負うと強調している。

 「メルドニウムは典型的な禁止薬物であり、これが前例のない状況を作っている。したがって、アンチ・ドーピングの世界の秩序を守るため、さらなるガイダンスを作った」とリーディー氏は話している。

 ロシアのスポーツ省とナショナル・オリンピック委員会は、WADAの声明を歓迎するコメントを発表し、ロシア当局は数多くのアスリートたちが赦免を受けられるように提案している。

 ロシアテニス協会の代表であるシャミル・タルビスチェフ氏はR-スポーツエージェンシーの取材に対して、シャラポワが8月のリオデジャネイロ五輪に出場できるようになることを望んでいると話し、ロシアの水泳協会は世界チャンピオンのユリア・エフィモワが競技生活に戻れるだろうと示唆している。

 「ドーピング違反をしたアスリートたちが“大赦”を受けるというわけではない」とWADAのスポークスマンであるベン・ニコルズ氏はAP通信の取材に対して電子メールで解答している。「むしろ、これらはアンチ・ドーピング機関が個々のケースに関して特定の状況を評価しなければならないというガイダンスとして用いられるものになる」。

 シャラポワは、これまで5つのグランドスラム大会で優勝した実績を持つ選手だが、彼女は過去10年間に渡って医学的な理由のためにメルドニウムを服用し、WADAが今年からメルドニウムを禁止薬物に指定したという連絡に気づかなかったとしていた。

 シャラポワは国際テニス連盟(ITF)による聴聞会で詳しい事情を聴取するまでは暫定的な出場停止処分を受けている。

 「我々はこの件が進行中であるということ、そして、聴聞会を開くことを決めている」とITFのスポークスマンのニック・イミソン氏は水曜日にAP通信の取材に対して答えている。「私はWADAの声明を読んだ。そして、現在進行中の件に関してもWADAからの情報を見ることになるのは間違いない。しかし、それらは進行中の件の事実については影響を及ぼさない」

 シャラポワの弁護士は、WADAの声明は2015年のWADAによるメルドニウムの扱いが「お粗末だったことの証拠」であると話している。

 「この通知が強調するのは、WADAがメルドニウムを禁止する際に、非常に多くの合理的な疑問が存在したのか、また、同時に選手たちへの通知に問題があったかということだ」とシャラポワの弁護士のジョン・ハガティ氏は言う。「この通知は2015年の段階で広く知らされるべきだったことであり、そうされていれば、多くのアスリートたちの選手生命にとっても多くの違いが生じていたはずだ」。

 WADAはメルドニウムに関して、体内の濃度が1mlにつき1~15μgであり、検査が3月1日以前に行われたもの、または、濃度が1mlあたり1μg以下である場合には、3月1日以降の検査でも薬物を服用したのが1月1日以前であると見なされ、暫定的な処分は解除されるとしている。

 WADAは1月1日以降にメルドニウムを服用したことを認めるアスリートの場合はドーピングとして扱うとし、また、薬物の濃度が1mlにつき15μgを超える、または、3月1日以降の検査での陽性反応も同様にドーピングとして扱うとしている。(C)AP

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