中国共産党の”食品安全パフォーマンス”に疑問殺到の舞台ウラ
こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。2016年4月24日から26日にかけて、中国の李克強首相が3年前に発生した地震被害に対する慰労を目的として四川省を訪れました。李首相は地震記念館のモニュメント前に献花をするといったパフォーマンスを行いましたが、26日に省都・成都の食品市場に訪れた際の報道写真が中国国内で話題となりました。
■美化された中国市場に呆れる国民たち
中国の新聞やインターネットには、李首相が市場で売られている作物を手に取り人々と談笑する写真が掲載されたのですが、その様子には多くの中国人が違和感を持ちました。
まず写真には、トマトやキュウリなど新鮮な作物が整然と並べられている様子が映し出され、その姿はあたかも先進国のスーパーマーケットのようでした。しかし実際の中国の市場は、さばいた動物の肉が地面に直接置かれるなど非常に混沌としており、商品も日本では考えられないほど乱雑に扱われます。
写真に掲載された商品の値段も正規のものとは思えません。例えば写真にはレタス500gが1元(約17円)、豚肉500gが16元(約270円)という値札が写し出されていましたが、僕の故郷である浙江省杭州市の市場では、レタス500gが10元(約170円)、豚肉500gが32元(約540円)と2〜10倍程度の相場になっています。
そして新聞やネットによると、李首相は市場の精肉店の店長に対し「肉や野菜は価格だけではなく、安全性も大事な問題だ」と発言したそうですが、あまりにも笑止千万な話です。日本のみなさんもご存知かと思いますが、僕自身も先日コラムで取り扱ったように、賞味期限切れの食材の使用、違法薬品の投与、偽装食品の氾濫など、現在の中国では食品に対する不正が横行しています。それにも関わらず中国製食材の安全性を強調する李首相の姿を見て、中国のネット上には怒りを通り越して呆れたような書き込みが多く寄せられていました。
今回の市場の報道は、おそらく諸外国に対する「中国人民は幸せに暮らしている」という中共政府の政治的アピールだと思います。整然とした市場の様子は「中国の衛生観念は向上している」、安く値がつけられた作物は「貧しい人々も新鮮な食品が購入できる」「中共政府は国民の生活を保障している」、李首相の発言は「中国の食品は安全」ということを意味しているのでしょう。しかし、当の中国人たちはこれらが「張り子の虎」であることを十分承知しています。
李首相の行為を受け、中国のネット上には彼を茶化した書き込みが多く寄せられました。「李首相のおかげで臨時セールだ!早く買いに行こう!」という書き込みを受け、「市場は李克強がいるから立ち入り禁止だよ」、「李首相が帰ったら相場は元に戻るよ」という返信が寄せられたり、李首相が市場で2kg程度の豚肉を購入したことを受け、「おそらく豚肉は捨ててしまうだろう」という皮肉が寄せられていました。なぜなら中共政府の高官たちは「特別供給」という安全な環境で生産された野菜や食肉を手に入れることが認められています。高官たちは経済的な面から危険な食材を摂取せざるをえない一般市民を尻目に、毎日安全な食生活を楽しんでいるのです。ちなみに上述のような書き込みは瞬時に削除されました。
また、李首相が大きな豚肉の塊を購入したにも関わらず写真には肉をさばくための包丁が写っていませんでした。おそらくこれは警護用にあらかじめ市場の店頭から包丁を撤去したためでしょう。李首相が豚肉を購入したのは善意などではなく、前々から決められていたパフォーマンスだったと思います。
不自然なほど整然とした店頭、判で押したような笑顔を浮かべるような一般市民など、市場にたたずむ李克強の写真は北朝鮮が諸外国に公開する写真を連想させます。急速な経済発展を遂げ「21世紀の大国」を自負する中国ですが、実態は北朝鮮と同じく独裁政権による虚飾国家に過ぎないのです。
著者プロフィール

漫画家
孫向文
中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)など。
(構成/亀谷哲弘)