清原どころか敏腕刑事も溺れる?覚せい剤の危険な魔力
法廷で大きな体をまるめ、すすり泣くその姿に「番長」と呼ばれた面影は見当たらなかった──。5月17日に開かれた清原和博被告(48)の初公判を傍聴した記者の感想だ。検察の求刑は2年6月。5月31日の判決の日まで、自らが堕ちた覚せい剤地獄をどんな風に振り返るのだろうか。
2月にあかるみになった事件は、社会にとてつもない衝撃を与えたが、この清原事件からさかのぼること1年前の2015年4月、一報を耳にした誰もが「まさか」と思う逮捕劇があったことをご記憶だろうか。
警視庁組織犯罪対策5課がこの時、覚せい剤取締法違反(所持)容疑で逮捕したのは当時66歳のタクシー運転手の男だった。一緒に交際していた40代の女も逮捕されている。
問題は男の前職だ。1971年に採用され2009年に定年退職した警視庁の元警部だったのである。
「主に暴力団捜査などを担当し、在職中には警視総監賞を62回受賞した超がつく優秀刑事だった。しかも、うち10回は覚せい剤の摘発に関するものだったというのだから、皮肉にもほどがある」(全国紙社会部記者)
■取り調べで関心を示す警察官?
明るみになるのは氷山の一角ながら、覚せい剤捜査にあたる警察官が退官後、まさしく「ミイラ取りがミイラ」になるパターンは少なくない。覚せい剤取締法違反で実刑判決を受けたことがある元中毒患者は次のように語る。
「私は2回捕まっているのですが、いずれも取り調べに当たった警察官は私が話す覚せい剤を使ったときの体験談に興味津々でした。シャブを使って性行為を行うと、通常の何百倍も快感を得ることができる。めんどくさいという感覚が思い出せないほど快活になる。そうした話をしていると、必ず相手は前のめりになっていましたね。口に出してはっきりと『現役のいまのうちはさすがにまずいけど、定年になったらぜったいやってみたい!』という警官までいました」
接点を持てば恐ろしい未来が待っている覚せい剤。まさに「君子危うきに近寄らず」だ。
- 文・海保真一(かいほ・しんいち)
- ※1967年秋田県生まれ。大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーライターに。週刊誌で執筆し、芸能界のタブーから子供貧困など社会問題にも取り組む。主な著書に『格差社会の真実』(宙出版)ほか多数。