北朝鮮、中央銀行「機能回復」の狙いは (1/2ページ)

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北朝鮮、中央銀行「機能回復」の狙いは

北朝鮮にも、もちろん銀行はある。しかし、利用する人はほとんどいない。全く信用がないからだ。

故金正日氏は、2009年に「貨幣改革」と称して、デノミを断行した。市場に奪われていた経済の主導権を国に取り戻すために、旧紙幣を全額銀行に預けさせ、その一部だけを新紙幣で引き出させる形にした。

多くの人が銀行に財産を奪われ、経済も社会も未曾有の混乱に陥った。そんな経験をした人々が銀行を信用するわけがなく、おカネを預ける人は「バカ」扱いされるほどだ。

現金支給が止まる

80年代以前、まだ計画経済が機能していた頃は、銀行も役割を果たしていた。

内閣は、経済計画に基づき、各工場に予算を配分し、「行票(ヘンピョ)」と呼ばれる小切手を使って送金していた。ヘンピョを受け取った工場は取引先に渡して材料を購入したり、銀行で現金化したりしていた。

ところが、計画経済の崩壊で、各地方の銀行には中央から現金が支給されなくなり、ヘンピョの現金化ができなくなった。工場間の取引は現金で行われるようになり、銀行は無用の長物となった。

咸興(ハムン)出身の50代の脱北者によると、90年代中頃に成川江区域の朝鮮中央銀行には全く現金がなく、玄関は固く閉じられていた。職員はみんな辞めてしまい、市場で商売に専念していた。

それ以降、送金や貸出の役目はドンジュ(金主、新興富裕層)が営む両替商に取って代わられた。

ところが、昨年12月に開かれた「第3回全国財政銀行イルクン(働き手)大会」や5月に開かれた朝鮮労働党第7回大会をきっかけに、北朝鮮の銀行が変わりつつある。

党大会では、朴奉柱(パク・ポンジュ)総理を労働党政治局の常務委員に昇進させ、郭範基(クァク・ポムギ)氏、吳秀容(オ・スヨン)氏、盧斗哲(ロ・ドゥチョル)氏などの経済官僚を労働党政治局委員と候補委員に登用するなど、経済に力を入れる姿勢を鮮明にしている。

また、イルクン大会では、地方での銀行設立など金融システムの再整備が議論された。

その一環として、北朝鮮の銀行が最近になって送金や貸出業務を始めた。

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