田中角栄 日本が酔いしれた親分力(4)日本を発展させる資金作りに挑んで (2/2ページ)

アサ芸プラス

ぎりぎりの出張費しかもらえない井上にとって、そのころの20万円はひどくありがたかった。

〈こういう細かいところにも気を配っているんだな〉

 そんな田中の依頼を受けた井上は、さっそく調査結果をまとめ、田中に報告した。

「アメリカでは、ガソリンの税金を、道路整備財源に充てております」

 田中は、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)もその意向であることを察すると、ガソリン税を道路法案の財源に充てることに決めた。井上も喜んだ。

「自前の財源で道路を整備するのは、夢でした」 

 48年(昭和23年)に独立したばかりの建設省に、その力はなかった。

「田中先生、もし道路三法ができれば、道路整備の基礎工事は、最低限できます。特にガソリン税法が通れば、建設省が独自の財源を持てることにより、道路整備の長期計画が立案できます。その意義は、計り知れないものがあります」

 道路三法とは、【1】道路法【2】ガソリン税法(道路整備費の財源等に関する臨時措置法)【3】有料道路法(道路整備特別措置法)を指す。

 田中は、土建屋上がりゆえに、建設省の連中には親近感を感じていた。今後、地元の橋などを直させる時にも、ただ「ふるさとの西山町の橋を直せ」と建設省の役人に命じても動いてくれるはずがない。建設官僚が動きやすいように、まずは財源を作ることが先決と考えていた。

作家:大下英治

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