北朝鮮の「中間管理職」を悩ます銃殺の恐怖と脱北の誘惑 (1/2ページ)

デイリーNKジャパン

北朝鮮の「中間管理職」を悩ます銃殺の恐怖と脱北の誘惑

北朝鮮で進められている「200日戦闘」に、各企業所(日本でいうところの会社)の中間管理職、いわば中間幹部たちが苦しめられている。なかには、「もう脱北するしかないかも」と思い詰める中間幹部もいると米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えた。一体、どういうことか。

バツイチ男性を待つ「餓死の恐怖」

北朝鮮では、5月の朝鮮労働党第7回大会前に「70日戦闘」という大増産運動が展開された。どんな形であろうと党大会で何らかの成果を示すためだ。そして、70日戦闘が終わったのもつかの間、今度は「200日戦闘」が提唱され、やはり大増産運動を繰り広げはじめた。

ただし、スローガンだけで、具体的な目標も提示されず、原材料の供給も保証しないまま。そもそも、増産しようにも、まともに稼働する工場は限られている。しかし、当局から各工場の中間幹部へは「成果を出せ」と命じ、上層部は、「ともかく生産を増やせ」と煽り立てる、すなわち精神論に基づいた大増産運動に過ぎない。

工場は稼働せず、仮に稼働しても、もらえる薄給では最低限の生活もままならなず、従業員は市場に出て商売にいそしむ。稼ぎがなければ、女房に三行半を突きつけられるからだ。女房に見放された生活力も稼ぎもないバツイチ男性を待つのは「餓死の恐怖」あるのみ。

そして、従業員がいなければ、わずかながらの稼働もさらに低下し、成果を出せない──北朝鮮の各工場は、こんな悪循環に陥っている。

金正恩式恐怖政治の犠牲者

平安北道の情報筋によると、新義州市を代表する大工場、楽園機械連合企業所ですらも、稼働率は3割にも満たない。いや、稼働しているだけまだマシだ。韓国労総の報告書によると、2008年現在、北朝鮮全土の工場の70~80%は全く稼働していない。それでも成果を要求される。

だからと言って、中間幹部たちが「成果はありません」との報告を上げるわけにはいかない。総和(総括)で責め立てられ、クビになり、山奥の農場や炭鉱に飛ばされてしまうからだ。ヘタをすれば収容所送り、さらなる最悪な結末を招くこともある。

昨年、スッポン養殖工場の支配人が処刑される事件が起きた。

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