ユニクロ成長を25年支えた超プロが優しく教える「会計の基本」

Suzie(スージー)

ユニクロ成長を25年支えた超プロが優しく教える「会計の基本」

『新入社員から社長まで ビジネスにいちばん使える会計の本』(安本隆晴著、ダイヤモンド社)の著者は、30年以上にわたって経営コンサルティングの仕事に携わってきたという人物。

ユニクロ(ファーストリテイリング)、アスクル、UBICなど、複数の上場企業の社外役員を上場前から勤めてきてもいるのだといいますが、そうした活動のなかで気づいたことがあるのだそうです。

多くの人は自社のビジネスの話は熱心に語るのに、会計の話になった途端に逃げ腰になるということ。

会計数字の裏づけがないため、事業の内容を聞いてもまったくピンとこないというわけです。

だから「会計」や「簿記」に自分から壁をつくってしまっていて、そのあたりは経理担当者や顧問税理士に任せっきりになっている人が少なくないというのです。

そこで、多くの人が敬遠しがちな複式簿記の内容にはできるだけ触れず、決算書や会計の考え方が理解できるように解説しているのが本書だということ。

しかし、「そうはいっても、やっぱり不安」だという方もいらっしゃるはず。そこできょうは、基本中の基本に部分に触れた「算数がわかれば『会計』は理解できる」に注目してみましょう。

■会計は算数がわかればOK!

世の中のすべての組織の活動を、ひとつの観点から説明するのは現実的に不可能。ところが、どんな会社の活動であっても、決算書でほとんど説明することができると著者は断言しています。

会社で人が動けばお金が動き、お金が動けば会計がその動きを記録する。正しいルール(会計基準)に基づいて記録された数字(会計数字)は、絶対にウソをつかないというのです。

端的にいえば、会計とはビジネスの行動指針になるとともに、事業の関係者に活動成果を報告するための道具。

そして、それは決して難しいものではなく、小学校で習った加減乗除(+—×÷)がわかれば理解できるのだといいます。だとすれば、算数がわかりさえすれば会計は理解できるということになります。

本当なのでしょうか?

■会計の役割は舵取りと成績表

そもそも社会に役立つようなビジネスにおいては、商品の品質や価格がお客様に受け入れられれば、必ず儲け(利益)が出るもの。そして儲けが出れば、少しずつ現金も貯まっていくことになります。

しかし逆に、それが社会に役立たないビジネスで、お客様に受け入れられなかったとしたら、当然ですが儲けは出ません。やがて会社を立ち上げたころの元手資金も底をつき、いつかは倒産ということになるわけです。

そのため経営者は、最初からきちんと儲けが出て、その儲けをどう使えば事業が続けられるのか、しっかり考えなくてはならないということ。

そんなとき、「いけるぞ!」「このままだと危ない!」などのセンサーの役割を果たすのも会計なのだと著者は主張しています。

大工さんが家を建てるのにノコギリやカンナを使うのと同じで、経営者は会社の舵をとるために会計という道具を使うという考え方です。

そして会計のもうひとつの役割は、お金を出資してくれた株主や、お金を貸してくれた銀行などに対して「事業はこんな状況になっています」と説明するときの資料。

言葉だけで説明するよりも、成績表のような数字の裏づけがあるほうが説得力は高まるということです。

■会計の種類は覚える必要なし

ところで会計の本を読むと、「財務会計」と「管理会計」の違いが書かれていることがよくあります。

「財務会計」とは株主、銀行、税務署などの社外関係者に情報を伝えるための会計。貸借対照表、損益計算書。キャッシュフロー計算書などの決算書、会計方針・注記など、法律で決められたルールをもとに書類がつくられているのだそうです。

対する「管理会計」は、原価計算書や事業部別損益表などのように、経営者や管理者などの車内関係者に情報を伝えるための会計。

法律で決められたルールではなく、自由な形式で資料がつくられているのだといいます。

そしてビジネスの現場では、財務会計と管理会計の区別なく資料をつくったり、会計用語を使ったりしているのだといいます。

また上場会社などでは、決算書の目的によって金融商品取引法会計、会社法会計、税務会計、国際会計など、いろいろな制度の会計があるのだとか。

名称を並べられただけで頭が痛くなりそうですが、実際のところ、どこからが○○会計でどこからが別の会計だと定義しても難しくなるだけ。

著者はそういい切ってくれるので、それだけでも少し気が楽になります。

もっといえば、そのような観点に立っているからこそ、本書には一般的な会計の本のような堅苦しさ、難しさがあまりないのかもしれません。

以後も全体的に、会計の基礎をビギナー目線で手取り足取り教えてくれるようなスタンスが貫かれています。だからこそ本書を利用すれば、少なくとも会計についての“覚えておくべきこと”は頭に入れておくことができそうです。

(文/作家、書評家・印南敦史)

【参考】

※安本隆晴(2016)『新入社員から社長まで ビジネスにいちばん使える会計の本』ダイヤモンド社

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