今でも変わらぬ人気! おもしろさが色あせない名作映画10選

学生の窓口

名作とうたわれる映画は、公開から長い年月が経っても多くの人に愛され、観られるもの。大学生のみなさんにもそんなお気に入りの古い映画があるのではないでしょうか。今回は公開から10年たっても20年たっても見返すたびに新たな発見がある名作映画の世界、入門編をお送りします。

■非情なマフィア一家を描いた「ゴッド・ファーザー」

ゴッド・ファーザー三部作の第一作となる本作品は、結婚披露宴の場面から始まります。祝いの席の裏でも進む、裏社会の相談ごと。明と暗の対比は、序幕からすでに始まっています。コルレオーネ家の三男マイケルは家業を嫌い、一般社会で生きることを望んでいますが、状況が許さず暗黒社会に囚われていきます。望まないながらも手腕を発揮し、ファミリーの二代目ドンとして成長していくマイケル。彼のかなしい変遷が見どころにもなっています。

ニューヨークを牛耳るマフィア、コルレオーネ一家を描いたピカレスクドラマです。マフィアとして生きる裏社会の顏と、強い絆で結ばれた家族思いのイタリア系アメリカ人一家の一員としての顔と。非情に見える人間の中にも温情があるという、人間や社会の複雑な一面も切り取っています。マフィアのメンバーとして容赦なく暴力を振るう一方で、善き家庭人や頼りになる友人としての顔も見せる。登場人物たちの、落差の激しさが印象的です。

監督:フランシス・フォード・コッポラ
脚本:マリオ・プーゾ、フランシス・フォード・コッポラ
撮影:ゴードン・ウィリス
音楽:ニーノ・ロータ
キャスト:マーロン・ブランド、アル・パチーノ、ロバート・デュバル

■「お熱いのがお好き」でコメディエンヌとしてのマリリン・モンローに魅了される

永遠のセックスシンボルと呼ばれたマリリン・モンローが、コメディエンヌとしての一面を発揮したコメディー映画の名作です。1929年代の禁酒法時代のシカゴが舞台。ギャングの追跡の目を逃れるため、女装して女ばかりの楽団に紛れ込んだ二人のジャズ奏者、ジョーとジェリー。そこで出会ったのが、マリリン・モンロー演じるシュガーという女性。観客には女装がバレバレなのに、女装を見抜けないシュガーに一目惚れしてしまうジョー。一方同じく女装中の相棒のジェリーは、大富豪に求婚されます。着地点の見えないドタバタ劇が、とにかく楽しい作品です。

出会った男女がなかなか結ばれず、周囲を巻き込んでの珍騒動を繰り広げるストーリーは、ロマンチック・コメディーの王道ともいえます。やや抜けたところのある金髪美人というパブリックイメージを、裏切ることなく体現したマリリン・モンローがとびきりキュートです。アメリカ映画史に残る名台詞「完全な人はいない」を筆頭に、気の利いたセリフが散りばめられています。

監督:ビリー・ワイルダー
脚本:ビリー・ワイルダー I・A・L・ダイアモンド
撮影:チャールズ・ラング
音楽:アドルフ・ドイッチェ
キャスト:マリリン・モンロー、トニー・カーティス、ジャック・レモン

■「ニューシネマパラダイス」で映画が大きな世界への入り口だった時代を知る

ローマで暮らす主人公の映画監督サルヴァトーレのもとに、故郷から旧知の人物の死が届くシーンから映画は始まります。亡くなったのは、主人公を映画の世界に導いた師であり旧友でもあるアルフレード。アルフレードと過ごした過去を回想する形でストーリーが進みます。映写技師のアルフレードと、後の映画監督トト少年との心の交流が見どころです。トトを小さな世界から大きな世界へと送り出したのは、アルフレード。世代を越え映画を通じて信頼を深めていくふたりの姿と、村という小さな世界で年代の違う人々をつなぐ映画や映画館の姿が重なります。

シチリアの小さな村を舞台に、娯楽の少ない市井の人に映画が愛され心の拠りどころとなっていたさまを描く、映画への愛情が詰まった作品です。小さな村の小さな映画館が娯楽の王様として君臨し、やがて新しい時代に取り残されてゆく姿を、詩情豊かにユーモラスに描きます。過去への哀愁がベースになっていますが、美しいラストシーンでは再生の予感を感じさせ、もの哀しさの中にも希望を感じさせる内容です。

監督:ジュゼッペ・トルナーレ
脚本:ジュゼッペ・トルナーレ
撮影:ブラスコ・ジュラート
音楽:エンニオ・モリコーネ、アンドレア・モリコーネ
キャスト:フィリップ・ノワレ、ジャック・ペラン、サルヴァトーレ・カシオ

■憂鬱なんて吹き飛ばせと「ブルース・ブラザーズ」は呼びかける

愉快で陽気なメロディーに彩られた、歌って踊れるコメディー映画の金字塔です。1970年代のアメリカで人気だったテレビ番組、「サタデー・ナイト・ライブ」から生まれた映画です。テレビの人気キャラクター、ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドが映画で演じるのもテレビと同じくバンドマン。「ブルース・ブラザーズ」を結成し、生まれ育った孤児院を救うためにライブで歌います。レイ・チャールズにアレサ・フランクリン、ジェームス・ブラウンといった超有名アーティストも出演者として顔を出す、豪華な作品です。

孤児院を救うために各地でライブを繰り広げていくというストーリーですが、かなり脱線気味です。兄ジェイクの命をつけ狙う女が脈絡もなく重火器で襲い掛かり、激しいカーチェイスもあるなどアクションも満載。バカバカしい笑いと踊り出したくなる愉快な音楽に、憂鬱も吹き飛びます。愉快な音楽に彩られた映画が発しているのは、弱者救済のメッセージ。笑い飛ばせとの力強いエールが響き渡ります。

監督:ジョン・ランディス
脚本:ダン・エイクロイド、ジョン・ランディス
撮影:スティーブン・М・カッツ
音楽:アイラ・ニューボーン
キャスト:ジョン・ベルーシ、ダン・エイクロイド

■情熱的な恋にのせて、激動するアメリカ社会を描いた「風と共に去りぬ」

名家の娘として生まれるも、やがて敗者となる誇り高き女性スカーレットをヒロインに、南北戦争時代のアメリカを描いた壮大な歴史大河ドラマです。デジタルリマスター版での上映時間は231分。初回上演時は3時間を超える長編で、アカデミー賞10部門を独占しました。現代では再現不可能な、豪華絢爛さにあふれた大作です。ヒロインのスカーレットを演じたビビアン・リーはこの作品がデビュー作。映画史に残る大女優となりました。

南部の大農場園主の娘に生まれたスカーレットは、美貌に恵まれた勝気な女性。ところが心を寄せる男性アシュレイが選んだのは、彼女とは正反対の大人しい女性メラニーでした。スカーレットの淑女らしくない振る舞いに心魅かれたならずもの、レット・バトラーとはすれ違うばかり。初恋に敗れたスカーレットが真の愛情に気付くまでの半生に、南北戦争で価値観が一変するアメリカの世相が絡みます。ラブロマンスと激動する社会を融合させた、見どころの多い作品です。奔放でたくましいスカーレットは、新しい女性像として多くの人の記憶に残りました。

監督:ヴィクター・フレミング
脚本:シドニー・ハワード
撮影:アーネスト・ホーラー、レイ・レナハン
音楽:マックス・スタイナー
キャスト:ヴィヴィアン・リー、クラーク・ゲーブル、レスリー・ハワード

■「スタンド・バイ・ミー」で珠玉の少年時代をしのぶ

死体を探しに冒険の旅に出る……小さな町の秘密基地に集う、クリス・ゴーディ・テディ・バーンの4人組は、イタズラめいた思いつきを実行に移します。思いつきを実行に移して浮かれる彼らはいつもよりハイテンション。画面からは、特別な時間を共有するものだけが持つ空気が伝わってきます。そして特別な時間には必ず終わりが来ること、特別な時間の最中にも綻びが顔を出すことも同時に描きます。少年時代の友情は、危ういバランスの上でのみ成立する儚いものであることを、描き切っています。

少年時代にしか持ちえない友情を、オールディーズの名曲に載せて描いた青春映画の傑作です。タイプの違う4人の少年が、心の底から笑い合ってバカになれる。人生でほんの一瞬しか訪れない、奇跡のような時間を閉じ込めた作品です。奇跡のような時間をすでに喪った、大人目線で描かれているせいか、ノスタルジックなトーンに貫かれています。少年時代の幸福な思い出が、いつまでも人を支え続けることを描いています。ジェームス・ディーンの再来と騒がれたリヴァー・フェニックスの出世作でもあります。

監督:ロブ・ライナー
脚本:レイノルド・ギデオン、ブルース・A・エヴァンス
撮影:トーマス・デル・ルース
音楽:ジャック・ニッチェ
キャスト:ウィル・ウィトン、リヴァー・フェニックス、キーファーサザーランド

■階級や性差の壁を越えて、「リトル・ダンサー」は軽やかに踊り出す

男らしさが尊ばれるイギリスの炭鉱町で、ひそかにバレエダンサーに憧れる少年ビリーの夢が叶うまでを描いたヒューマンドラマです。ハイカルチャーの象徴でもあるクラシックバレエに挑むのは、労働者階級出身のしかも男の子。主人公のビリーが、不況下という夢を叶えるのが難しい環境にも負けず、階級や性差の壁をも越えてチャレンジする姿が感動を呼びました。

ビリーは母を亡くし、熱烈なボクシングファンである父の希望でボクシングジムに通っていました。殴り合うボクシングよりも、音楽に合わせて優雅に踊るバレエに強く惹かれていくビリー。友人のトニーや音楽教師はビリーを応援しますが、男、あるいは労働者階級の男たるもの男らしくという固定観念が、ビリーの夢を阻みます。反発にあいながらも才能を開花させ、楽しそうに踊るビリーのダンスシーンが見ものです。軽やかにに固定観念を打ち破る、爽やかさにあふれています。成長したビリーを、人気バレエダンサーであるアダム・クーパーが演じたことでも話題になりました。

監督:スティーブン・ダルドリー
脚本:リー・ホール
撮影:ブライアン・テュファーノ
音楽:スティーブン・ウォーバック
キャスト:ジェイミー・ベル、ジュリー・ウォルターズ、アダム・クーパー

■人間の深層心理に迫った「羊たちの沈黙」で、プロファイリングの怖さを知る

猟奇的な連続殺人事件の解決をテーマに人間の深層心理に迫る、サイコスリラーの傑作です。FBIアカデミーの実習生クラリスをジョディ・フォスターが、事件の解決に協力する優秀な精神科医で殺人鬼でもあるレクター博士をアンソニー・ホプキンスが演じます。主演ふたりが息詰まる心理戦を演じ、アカデミーの主演男優賞と女優賞をそれぞれ獲得しました。作品、監督、脚本とアカデミー主要5部門を独占した作品です。

若い女性が殺され皮膚が剥がされるという猟奇的殺人事件が発生し、FBIが事件の解決に乗り出します。FBIが白羽の矢を立てたのは、クラリスとレクター博士。レクター博士は捜査協力の見返りに、クラリスが過去を明かすことを要求します。知的ではあるけれどどこか壊れたレクター博士が、時折見せる狂気がとにかく恐ろしい作品です。レクター博士の狂気に抵抗するクラリスとの攻防も見ものです。刑務所に収監される身でありながら、的確に犯人像をプロファイルしていくレクター博士が、異様な存在感を放っています。

監督:ジョナサン・デミ
脚本:テッド・タリー
撮影:タク・フジモト
音楽:ハワード・ショア
キャスト:ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス、スコット・グレン

■決して諦めなかった「ショーシャンクの空に」で不屈の精神を知る

冤罪で終身刑となり刑務所に閉じ込められた元エリート銀行員を主人公に、希望を持ち続ける不屈の精神を描いたヒューマンドラマです。監視され、行動を制約される不自由な環境にあっても環境に染まらない主人公アンディ。アンディの自由な精神が、環境に染まって希望を失っていた囚人たちにも作用し、周囲を好転させていく姿をも描いていて感動的です。閉塞感を抱いて当然の絶望的な状況から、どうすれば明るい希望を見つけられるのか、ヒントに満ちています。

アンディが冤罪で収監されたショーシャンク刑務所は、不正や腐敗、そして暴力がはびこる場所でした。刑務所には場違いなアンディは暴力の標的にされ、たび重なる理不尽に襲われます。理不尽さを乗り越えながら、周囲にも理不尽を乗り越える知識や力を与えていき、望まない場所で新しい生き方を切り拓いていくアンディ。不遇な状況からの逃走というアンディの生き様が、この作品のなによりの魅力となっています。実はこの作品、当初の興行成績はふるわずアカデミー賞も受賞していません。ですが批評家や愛好家からの評価は高く、国内では洋画ベストワンに推されたこともあるロングセラー作品です。

監督:フランク・ダラボン
脚本:フランク・ダラボン
撮影:ロジャー・ディーキンス
音楽:トーマス・ニューマン
キャスト:ティム・ロビンス、モーガン・フリーマン、ウィリアム・サドラー

■絶望する前に、「チャップリンの独裁者」を一度は見ておこう

パフォーマンスで観客を魅了する無声映画を好んだ喜劇王チャップリンが、初めて声を発した作品が「独裁者」でした。映画公開当時の1940年は、ナチスドイツがヨーロッパを席巻し、ファシズムによる人道に対する罪が着々と進行しつつある情勢でした。「絶望してはいけない」と人道を説きつつもコメディーの体裁を守り、観る人を楽しませる作品です。エンターテイメント作品の中に、人道に対する罪への嫌悪を忍びこませ、商業的にも成功を収めました。チャップリンの名を、映画史に永遠にとどめる作品です。

現在進行形で拡大中のファシズムを笑いものにするという、難易度の高い荒業をクリアーしたストーリーが秀逸です。チャップリン演じる独裁者が、風船の地球儀をもてあそぶシーンが象徴的です。弱者を蹂躙する強きものへの反発と、強者に蹂躙される弱きものへのいたわりという立ち位置が明確で、痛快です。誰もが即座にファシズムやヒトラーを思い浮かべる内容ながら、リアルさは追求していません。虚構や作りものを貫いた先に、リアルを越える可能性が生まれることを示し、物語の持つ大きな力を感じさせる作品になっています。

監督:チャールズ・チャップリン
脚本:チャールズ・チャップリン
撮影:カール・ストラス
音楽:メレディス・ウィルソン
キャスト:チャールズ・チャップリン、ポーレット・ゴダード

今を照射した新作映画のフレッシュさも魅力ですが、時を経ることで味わいを増し、後世に影響を与えた名作もまた魅力的です。取り上げた作品のいくつかは、後世の作品の中にオマージュとして登場しています。語り継がれる名作の世界を知ることで、新作映画を見る時にも今までとは違った視点が持てます。

「今でも変わらぬ人気! おもしろさが色あせない名作映画10選」のページです。デイリーニュースオンラインは、原作作品傑作おすすめ名作カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る