芸術的な作品が多数! おすすめのフランス映画10選

学生の窓口

フランス映画は、ハリウッドの大作映画とはひと味違った視点から世界や人物を描きます。小粋でおしゃれ、時にはエスプリやユーモアをたっぷり効かせたフランス映画の奥深い世界。今回はそんなフランス映画のぜひ見てほしいおすすめの10作品でご紹介します。

■内気でキュートな彼女に全世界が恋をした「アメリ」

モンマルトルのカフェで働く夢見がちで内気な少女アメリを主人公に、彼女の不器用な恋の行方をファンタジックかつユーモラスに描いた作品です。周囲の人を今よりちょっとだけ幸せにすることが生き甲斐のアメリ。彼女がもっとも苦手とするのは現実と向き合うこと。そんな彼女が恋に落ち、不器用ながらも現実と向き合おうとする姿が、とにかく可憐でキュートです。主演のオドレイ・トトゥは、本作で一躍世界のヒロインに踊り出ました。 ジャン=ピエール・ジュネ監督は、“人が幸せになる映画"をめざしてこの作品を作りました。人を幸せにすることには熱心でも、自身が幸せになるには勇気が足りないヒロインの恋の行方。欲しいものを欲しいと素直に言えない人の共感を呼ぶこと必至です。

現実のパリよりもパリらしく見えるよう、徹底的に作りこまれた映像からは、この映画の中でしか味わえないパリが味わえます。この映画をきっかけに、クレーム・ブリュレも大人気となりました。アメリの仕掛けるちょっとしたイタズラは、観客への幸せのおすそ分けです。

監督:ジャン=ピエール・ジュネ
脚本:ジャン=ピエール・ジュネ、ギョーム・ローラン
制作:ブリュノ・デルボネル
音楽:ヤン・ティルセン
出演者:オドレイ・トトゥ、マチュー・カソヴィッツ、ドミニク・ピノン

■1950年代のガーリーファッションに目が釘付けになる「タイピスト!」

ヒロインが着こなす華やかなファッションに、まずは目が奪われる「タイピスト!」。一流のタイピストを目指して奮闘する、ヒロインの成長を追ったお仕事映画です。厳しさの中に優しさも秘めた、鬼上司との恋も絡んでくるロマンチック・コメディーでもあります。ビジネスを描いても愛も忘れない、フランスらしいキュートさが詰まった作品です。ファッションだけでなく、ピンクのタイプライターやインテリアなど、ガジェットも魅力的。 雑貨屋の娘ローズは、田舎の嫁におさまるのが嫌で都会に出て働こうとします。オフィスワークに不向きなローズの唯一の武器は、早打ちタイピング。上司のルイからは、秘書として仕事を続ける条件として、タイプライター早打ち大会への出場を命じられます。

挫折を経験しながらも大会を勝ち抜いていくローズ。成功への階段を登りながらも揺れ動くヒロインの心の動きは、仕事だけの人生でいいのか悩む女性の共感を誘います。ハードワークを続ける上で必要な、モチベーションについても考えさせる内容になっています。

監督:レジス・ロワンサル
脚本:レジス・ロワンサル、ダニエル・プレスリー、ロマン・コンパン
制作:ギョーム・シフマン
音楽:ロブ、エマニュエル・ロブランド
出演者:ロマン・デュリス、デボラ・フランソワ、ベレニス・ベジョ

■豪華女優陣の競演が華やかで恐ろしい「8人の女たち」で、女の怖さを知る

雪に閉ざされたクリスマス前の大邸宅で起こった密室殺人事件。殺されたのは屋敷の主人マルセル。残されたのは、妻・娘・妹・義母に義妹そしてメイドといった年齢も立場も異なる8人の女たち。カトリーヌ・ドヌーブにエマニュエル・ベアール、イザベル・ユペールにファニー・アルダンと、フランスを代表する人気女優が8人の女を演じます。豪華キャストで送る、ミュージカル仕立ての群像劇。

次々と暴かれる家族の秘密から、目が離せません。犯人探しは一家の秘密を暴くこと。主の死をきっかけに虚飾が剥がれ落ち、露わになっていくそれぞれの女の本音が面白さ満点です。8人のキャストそれぞれにここぞという見せ場が用意され、誰にも言えなかった秘密をぶちまけていきます。ドロ沼の愛憎劇なのに軽妙で洒脱なのは、歌って踊ってのミュージカル仕立てのおかげ。時には笑いも誘います。

監督:フランソワ・オゾン
脚本:フランソワ・オゾン、マリナ・ドゥ・ヴァン
制作:ジャンヌ・ラポワリー
音楽:クリシュナ・レヴ
出演者:カトリーヌ・ドヌーブ、エマニュエル・ベアール、イザベル・ユペール、ファニー・アルダン、ヴィルジニー・ルドワイヤン、ダニエル・ダリュー、リュディヴィーヌ・サニエ、フィルミーヌ・リシャール

■すべてが正反対でもつながることができると証明した、「最強のふたり」

孤独な大富豪と何も持たない青年の交流を描いた「最強のふたり」は、コメディタッチのヒューマンドラマです。移民大国でもあるフランスの一面も盛り込んでいます。健康な体と率直さ以外は何も持たない黒人青年と、身体の自由以外は何不自由のない白人の大富豪と。正反対の二人をつなぐのは正直さや誠実さ。信頼で結ばれた相手と心から笑い合うことができれば、幸せな毎日が手に入ると、愉快な笑いを通じて教えてくれる痛快作です。 事故で頸椎を損傷し、首から下は一切動かず感覚も持たない大富豪フィリップ。彼を介護することになった黒人青年ドリスはスラム街出身で、フィリップが好むような文化教養とは一切縁がありません。それなのに心の交流を深めていくふたり。

フィリップの誕生日でドリスが見せた優しさには、うわべだけの文化や教養を超えた、本当の教養が描かれています。立場が違う人間を思いやれる優しさと、優しさを率直に表現するドリスの行動力に、胸が熱くなります。

監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
脚本:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
制作:マチュー・ヴァドピエ
音楽:ルドヴィコ・エイナウディ
出演者:フランソワ・クリュゼ、オマール・シー、アンヌ・ル・ニ、オドレイ・フルーロ

■家庭料理を宮廷料理に高めた「大統領の料理人」

1980年代のフランスを舞台に、ミッテラン大統領のプライヴェート・シェフに抜擢された女性を描いたコミカルなヒューマンドラマ。美食の国フランスで、男性が支配する料理界の頂点ともいえる大統領府エリゼ宮に、新風を吹き込んだ女性の活躍をエレガントにコミカルに描きます。出てくる料理がどれもおいしそうで、食欲もそそります。 地方で小さなレストランを経営していたオルタンス・ラボリは、史上初の女性料理人としてエリゼ宮に招かれます。そこは宮廷料理人たちが支配する、旧弊な世界。宮廷料理人たちは、自分たちとは出自も流儀も異なるオルタンスを冷たく扱います。その一方で、ミッテラン大統領の胃袋と信頼を勝ち取ったオルタンスが、エリゼ宮で過ごした日々と彼女のその後が描かれます。

オルタンスが作る料理はどれも家庭料理の素朴な味わいを残したもの。美食、あるいは誰かの心を掴む料理について、考えさせる要素が盛りだくさんです。

監督:クリスチャン・ヴァンサン
脚本:クリスチャン・ヴァンサン、エチエンヌ・コマール
制作:ローラン・ダイヤン
音楽:ガブリエル・ヤレド
出演者:カトリーヌ・フロ、ジャン・ドルメッソン、イボリット・ジラルド

■チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が圧巻の「オーケストラ!」

ロシアの名門オーケストラを政治的理由で追われた天才指揮者が、パリ公演という30年越しの夢に向けて奮闘する姿を描いた、ユーモアあふれるヒューマンドラマです。前半はロシアでニセの楽団を結成し、パリに向けて出発するまでの奮戦が。後半はパリに着くも、迷走する楽団の姿が描かれ微苦笑を誘います。ニセの楽団を結成してまでパリ公演を望んだ、元指揮者の本当の目的は何なのか。謎を絡めつつ、芸術に介入する政治を跳ねつける、力強いメッセージを放ちます。

かつて天才指揮者と謳われたアンドレイ・フィリポフは、時の権力者に逆らったために、楽団清掃員に甘んじています。偶然目にしたパリ公演への誘いに、かつての仲間とともにニセの楽団を結成し、パリへと乗り込みます。ソリストとして指名した若き女流ヴァイオリニストとフィリポフたちとの因縁が、解き明かされていく過程も見ものです。ユーモアに包んでいますが、政治や過度な商業主義が芸術に介入し、時には芸術家の人生をも変えてしまう世相を強烈に皮肉っています。それなのに説教臭くなく、ただ音楽を愛する人たちが奏でる美しいメロディーが、いつまでも耳に残ります。

監督:ラデュ・ミヘイレアニュ
脚本:ラデュ・ミヘイレアニュ、アラン=ミシェル・ブラン、マシュー・ロビンス
制作:ローラン・ダイヤン
音楽:アルマン・アマール
出演者:アレクセイ・グシュコブ、メラニー・ロラン、フランソワ・ベルレアン

■「イヴ・サンローラン」は、モードの帝王の繊細な内面に触れたドキュメンタリー映画

21歳という若さで名門オートクチュール「クリスチャン・ディオール」のチーフ・デザイナーに抜擢後、ファッション界のトップを走り続けたイヴ・サンローラン。オートクチュールからプレタポルテに進出し、商業的には大成功を収めた彼の、知られざる苦悩の日々を追ったドキュメンタリー映画です。50年間公私ともにサンローランを支え続けたパートナー、ピエール・ベルジェ氏をはじめ、サンローランと長く交友関係にあった人たちが登場し、彼の孤独で壮絶な人生を語ります。 モードの帝王として何万点にもおよぶデザイン画を量産したサンローラン。コレクションを発表し続ける一方で、深刻な神経症に悩まされていた彼の孤独な姿を浮き彫りにします。

美の創造に一生を捧げた男性の生き様からは、創造と引き換えに苛烈な重圧に晒される、痛ましさも伝わってきます。美しいものを愛したサンローランとベルジェ氏の私邸は、生涯をかけて収集し続けた美術品の宝庫。現代の王宮とも呼ぶべき私邸内も、映画の中で公開されています。

監督:ピエール・トレトン
脚本:ピエール・トレトン、エヴ・ギルー
制作:レオ・アンスタン
音楽:コム・アギアル
出演者:イヴ・サンローラン、ピエール・ベルジェ

■奇跡の歌声を持つ少女の声は、耳の聴こえない家族にまで届く「エール!」

両親と弟の4人家族のうち、唯一耳が聴こえる少女ポーラは、歌の才能に恵まれていました。天性の才能に恵まれた声を、耳が聴こえない家族のための道具として使うのか。それとも夢を追いかけパリの音楽院をめざすのか。家族と将来の夢との間で揺れる少女の成長を、素晴らしい歌声に載せて描いたコメディタッチのヒューマンドラマです。 ハンディのある家族を助けて健気に家業を手伝ってきたポーラは、家族の愛情にたっぷりと包まれて育った少女。そのまま実家にとどまり家業の農家やチーズ作りを手伝うことを期待されていましたが、彼女には秘められた才能がありました。音楽教師に歌の才能を見出されたポーラは、パリの音楽院への進学をすすめられます。

家族か、夢か。重いテーマを、ユーモアいっぱいに軽やかに描き、爽快な感動が味わえます。オーディション番組で才能を見出され、歌手としてデビューしたばかりのルアンヌ・エメラがヒロインを演じます。

監督:エリック・ラルティゴ
脚本:エリック・ラルティゴ、ヴィクトリア・ベドス
制作:ロマン・バンダン
音楽:オリヴィエ・ラド
出演者:ルアンヌ・エメラ、カリン・ヴィアール、フランソワ・ダミアン、エリック・エルモスニーノ

■マイノリティを名乗ることで人生が逆転する男性を描いた「メルシィ!人生」

リストラの危機に晒された真面目なバツイチ中年男性が、ゲイを詐称することでリストラを回避しようと企んだことがすべての始まりでした。マイノリティは差別できないという、ポリティカル・コレクトネスを逆手に取ることで巻き起こる、珍騒動を描いたコメディ作品です。 避妊具を扱う会社で経理担当者として働くフランソワ・ピニョン氏は、真面目が取り柄の冴えない中年男性。妻とは離婚し、たまに会うティーンエイジャーの息子からも軽く扱われる日々。会社からリストラを宣告され、絶望のあまり死のうとしたピニョン氏に、隣人のベロン氏が入れ知恵をします。「マイノリティ差別が許されない企業は、ゲイとカミングアウトした人物をクビにはできない」と。ゲイを詐称することでリストラを回避したものの、今度は自社の広告塔に使われそうになったり差別主義者の暴力に晒されたりと、新たな面倒ごとに巻き込まれていくピニョン氏。

エスプリの効いたユーモアが随所にあふれ、人材を使い捨てにする冷酷な企業社会や差別への風刺もたっぷり効いた、快作です。

監督:フランシス・ヴェベール
脚本:フランシス・ヴェベール
制作:ルチアーノ・トヴォリ
音楽:ウラディミール・コスマ
出演者:ダニエル・オートゥイユ、ジェラール・ドパルデュー

■花の都パリはいかにして戦禍から守られしかを描く、「パリよ、永遠に」

第二次大戦下1944年8月のフランス。ナチスドイツの占領下にあったパリは、ひとつ間違えば灰になるところでした。パリを戦禍から救ったのはひとりの外交官。「パリよ、永遠に」は、パリの破壊を命じられたドイツ軍将校と、パリを守りたいスウェーデン総領事の対決をスリリングに描いた、重厚な歴史ドラマです。 連合国軍によるパリ解放を目前とした、ホテルの一室を舞台にストーリーは展開します。

パリの破壊を命じられたドイツのコルティッツ将軍と、何としてもパリを守りたい、パリで生まれ育ったスウェーデン総領事のノルドリンクと。パリの命運を賭けた老優ふたりの駆け引きが、この映画の見どころです。数日間におよぶパリ攻防戦を、たった一日のできごととして再構築しただけあって、テンポよく進み、観客を飽きさせない舌戦が続きます。コルティッツ将軍を良心と良識に裏打ちされた人物として描き、望まざる立場に立たされた人物の苦悩も織り込み、奥行きのある人間ドラマに仕上げています。

監督:フォルカー・シュレンドルフ
脚本:フォルカー・シュレンドルフ、シリル・ジェリー
制作:ミシェル・アマチュー
出演者:アンドレ・デュソリエ、ニエル・アレストリュプ

ベルギーやドイツ、あるいはイタリアといった近隣諸国との合作が進むフランス映画の中で、フランス単独で作られた映画を中心にピックアップしてみました。ファッションに音楽に美食にと、芸術大国フランスを堪能できる作品と、人権や人道に配慮した文化大国としてのフランスを堪能できる作品できるので、是非見てみてくださいね。

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