原作ファンの芥川賞受賞作家・村田沙耶香、『溺れるナイフ』愛を語る (2/4ページ)
原作のジョージ朝倉さんも中上健次を愛読していたと後から知ったが、ここには中上健次が描こうとしたものが漫画の形でここにあるという作品。たまたま、中森明夫さんのご紹介で山戸結希さんという非常に若くて才能のある映画監督に出会い、ジョージ朝倉さんの『溺れるナイフ』を撮っていて、今年の秋に公開だと聞き、これはどうしても熊野でみなさんと観なければならない映画だと、様々な方にお願いし、本日ここで上映する運びとなりました。脚本は、熊野でかかわっていらっしゃって青山真治監督の『路地へ 中上健次の遺したフィルム』でも中上の朗読をしている井土紀州さんが書かれています。脚本家・映画監督である井土紀州さんです。
井土:僕は同じ和歌山県尾鷲の出身です。最初、お話をいただいたときは、少女漫画かぁと思ったが、読んでみると神倉神社?火祭り?とコマが沢山あり、漫画全体のテイスト含め、中上健次の影響を受けた漫画家だ、だったらいけるかもしれない、と引き受けました。中上健次からとてつもない影響を受けた僕が、関係ない土地で仕事をしているのに、またこうして中上に引き戻されるのは不思議だなと感じています。
山戸:和歌山では17日間の撮影を濃密に過ごしました。ここに来ると、血が沸き立つような不思議な土地の力を感じ、グッと体の芯が熱くなります。ジョージ朝倉先生の『溺れるナイフ』は私たち世代の女の子にとって熱狂的な作品であったのですが、その作品に映画監督として関わった際に中上健次さんの名をとても聞くようになり、憧れのジョージ先生が愛読されていた、大切な作家さんであるということを知りました。こんな風に「孫」ではないですが、隔世遺伝のような形で、ジョージ先生の作品を通して、中上健次さんの熱が、伝播して映画を撮らせていただきました。これは、ティーン向けの中高生の女の子が観てくれる映画なのですが、もし映画『溺れるナイフ』を観てくれた子が熱を受け取って何か表現してくれたら、きっとみんないつのまにか中上さんに出会ってしまうし、この土地の力が、波紋のように広がっていけばよいなと思います。