世界の舞台の感触は? 自律型ロボットのコンテストで優勝した大学生にインタビュー!
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インタビュー
2015年9月に、東京で『ワールド・ロボット・オリンピアード(WRO)』日本大会という、自律型ロボットの競技大会が開催されました。この大会の大学生の部で優勝したのは帝京大学理工学部(宇都宮キャンパス)のロボット研究サークル。2チームが出場し、優勝と準優勝という快挙を成し遂げ、優勝チームは同年11月の世界大会にも出場しました。今回は、優勝メンバーの学生に大会で学んだことなどを伺いました。
■サークル発足からわずか3カ月の快挙!
今回お話を伺ったのは、優勝チームの帝京大学理工学部情報電子工学科の安波さんです。
――出場されたWROについて、どんな大会なのか教えてください。
安波さん この大会は、2004年に始まった「世界共通のキットを使った自律型ロボット」で競い合う世界規模の大会です。2015年大会では52カ国の2万5,000チームが参加しました。大会は小中高、そして大学生の各部で競います。
――大会ではどういったことが行われたのですか?
安波さん 今大会は「ボウリング」が種目でした。あらかじめプログラムされたロボットが自らボールを持ち、狙いをつけてピンを倒します。そしてその点数を競いました。私たちは2チーム体制で大学生の部に出場し、初出場ながら優勝と準優勝をすることができました。
――まさに快挙ですね!
安波さん サークルも2015年の6月にできた新しいチームなので、準備などかなりタイトなスケジュールでしたが、優勝できてうれしかったです。
――発足からすぐに日本大会ということだと、困難なことも多かったと思いますが、中でも特に難しかったのはどんなことですか?
安波さん プログラム作りや、ロボットを一から作るということ全てが初めての経験だったので困難だらけでした。顧問の蓮田先生や波江野理工学部長に指導してもらいながら、一つひとつ作り上げていきましたね。
――今大会に参加して学んだことはありますか?
安波さん 本を読む、また学校の勉強では得られないようなことを「実戦で学ぶこと」ができたのが良かった点です。より理解が深まりました。また大会本番ではコースが練習時とは微妙に違ったり、ボールの色が違って認識できなかったりということがありましたが、こうした本番の難しさを体験できたことも良かったです。
■アウェーの難しさ……想定外すぎた世界大会
――日本大会優勝後は、11月にカタールで行われた世界大会に出場されましたが、結果はいかがでしたか?
安波さん 世界大会では34チーム中10位でした。
――やはりそのレベルは高かったですか?
安波さん 上位のチームとは技術的に差があり過ぎました。特にプログラム技術に差がありました。上位のチームは画像認識機能を備えていたのですが、私たちはまだそこまで作ることができず、その差が大きかったと思います。
――初出場だと考えると上々の成績かとは思いますが、やはりまだまだ世界の壁は厚いのでしょうか。
安波さん 技術だけでなく上のレベルのチームは、トラブルが起こったときなどの「対応力」「問題解決力」というのが高く、そこは私たちに足らない部分です。見習わないといけないと感じましたね。あとは、自分たちの「英語力」も不足していたかな……と思いました。他の国の人との意思疎通や交流、また審判への対応など、英語力が足りないことで困難になるケースが多いので、今後は英語に関しても学んでいきたいです。
――先ほど国内大会ではコースの違いやボールの色などのトラブルがあったとお話しされましたが、世界大会ではどうでしたか?
安波さん 世界大会では「ボールのサイズが違う」というトラブルがありました(笑)。
――それは運営の致命的なミスなのでは!?
安波さん 私たちも抗議したのですが、それしかないと一蹴されてしまい……。私たちは競技の順番が最初だったのでとにかく慌てました。もし順番が後の方だったらもう少し対応できたかもしれません。
――他のチームも慌てていたのでは?
安波さん 他にはアメリカやカナダのチームが「聞いていない」と慌てていましたが、アジア圏の強豪チームは、慌てずに対処していました。
――次の世界大会ではそういったことがなければいいですね……。ただ得るものは多かったのではないでしょうか?
安波さん トラブルを含め、世界大会がどういったものかも体験できましたし、他国のいろいろな人と交流したり、日本の文化のことを話し、反対に相手の国の文化を学んだりなどできたのも良かったですね。
■今後の夢は理系人口を増やすこと!
――もともとロボットについて興味があったのですか?
安波さん ロボットを作りたいというよりは、何かを作ることが好きでした。
――ロボットを作るなど、何かを作ることの魅力やおもしろいと思う点は何ですか?
安波さん やっぱり自分でプログラムを考えて、それでロボットがうまく動いてくれると「成功した!」と、うれしくなります。そこがおもしろいと思う点です。
――活動を通してさまざまなことを学ばれたとのことですが、その中で「日常生活でも生かせている」と思うことはありますか?
安波さん 活動の中でいろいろな人と話し、かかわるようになったので、自分自身が「積極的になった」と思います。コミュニケーション力が上がったなと感じました。世界大会でも、拙い英語でもいいから話し掛けて行くことの大切さを学びました。「もっとさまざまな国の方と交流を持ちたい」と感じました。
――今後の展望を教えてください。
安波さん 私たちは「WRO Japan北関東大会」を運営していまして、そこで中学生や高校生の試合の審判を行っています。今後はそうしたロボットの発表の場をさらに設けたいなと考えています。また、中学生や高校生にロボットについて学び知ってもらうことで「理系を学ぶ人」がもっともっと増えたらいいなと思っています。あとは世界大会でメダルが取りたいですね。
――ご自身の今後の展望は?
安波さん 今はロボット制御について学んでいるので、将来は制御系の仕事に就きたいです。
――最後に同じ大学生や今後大学をめざす高校生、中学生にメッセージをお願いします。
安波さん 中学や高校時代に将来やりたいことが見つからなくても、今やっていることを一生懸命やることで、それが後々につながるし、自信にもなります。「何事も一生懸命取り組むこと」が大切です!
――ありがとうございました!
わずかな期間で日本一になった皆さんですが、やはり世界の壁は厚かったようです。しかし2016年の大会に向けてすでに着々と準備が進められていました。今年も種目はボウリングだそうです。次こそは世界大会でメダルを掲げる姿が見られるかもしれませんね。
取材協力:帝京大学
(中田ボンベ@dcp)