【高校野球】第98回全国高校野球選手権大会観戦記~甲子園で成長していく選手たち~ (2/2ページ)

デイリーニュースオンライン

■弱者に味方する甲子園のルールのようなもの

 甲子園の観客には昔から、弱者に味方するルールのようなものがある。以下にそれを記そう。

(1)終盤大量リードされているチームを応援する
(2)強豪と呼ばれる私立高校より無名の公立高校を応援する
(3)震災など被害を受けた地域の高校を応援する
(4)試合中、ケガやアクシデントに見舞われた不運な高校を応援する

 今回の場合は(1)に当たるが、極度なプレッシャーのなかで、得点ではリードしていた八戸学院光星がいつのまにか追い込まれていった。

 観衆が面白がって加勢した感が漂っていたからだ。

 次の3回戦で東邦と対戦し、このプレッシャーに打ち勝ったのが聖光学院(福島)だった。

 試合後、聖光学院の斎藤智也監督は、「8回9回は場内の雰囲気が変わった。これで負けたらつまらない。自分たちへの応援だと思え」と選手たちを励ましたと語った。

 聖光学院の選手たちは、試合前のミーティングでこの状況を予期し、対策を立てていたという。

 彼らは甲子園にのまれることなく、平常心で戦うことができた。

■目に見えない大きな宝物

 過去、甲子園にのまれたもっとも象徴的な試合は、2007年の決勝戦だろう。佐賀北(佐賀)に広陵(広島)が敗れたあの試合だ。

 広陵のエース・野村祐輔(現広島)は終盤4点リードしていたにもかかわらず、8回裏に満塁ホームランを浴びて力尽き、優勝を逃した。

 このケースは弱者に味方する前述の甲子園ルール(1)(2)にあたるが、微妙なボール判定などで、広陵が追い詰められたことは事実としてある。

 ただ、この経験が野村にとって将来の野球人生の大きな力添えになったことも事実であろう。

 勝者を称えてくれるのも甲子園ならば、逆に敗者に試練を与え成長させてくれるのも甲子園。

 今夏、グラウンドに泣き崩れた八戸学院光星の選手たちも、甲子園の土とともに、目に見えない大きな宝物を持って帰ったに違いない。

文・まろ麻呂
※企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。
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