天才テリー伊藤対談「八名信夫」(1)健さんが気配りで見せてくれたこと (2/2ページ)
テリー それは健さんが書いたもの?
八名 そう。何でもグッと辛抱する人だったから、それを聞いて「健さんでも腹が立つこと、我慢できないことがあるんだな」と思ったよ。
テリー プライベートで食事をする時なんかは、どんな会話をするんですか。
八名 東映の身内の連中だけの時は、「おい、いい女いないのか?」みたいな普通の会話をしますよ。でも、知らない人がいたら絶対そんなことは話さない。「高倉健です、よろしく」、これだけ。
テリー 外に一歩出たら、常に「高倉健」を演じている、という感じ?
八名 うん、本来はおもしろい人なんだけどね。あれは美空ひばりさんの誕生日パーティだったかな、出席していた東映の連中が緊張しているのか、ずっと静かだったんですよ。そしたら健さんが「お前ら、場を盛り上げないか! よし、俺がやる」って着ているものを脱いで、バーッと踊りだしたんだ(笑)。
テリー すごいなァ! でも健さん、ものすごい気配りの人ですもんね。
八名 そう。だけど、それで困ることもあってね‥‥健さんは雪が好きで、北海道にばっかりロケに行く。で、網走なんかに行くと高倉健用のブースがあって、その中でガンガンが燃えているんです。
テリー 寒い現場で暖をとるための、石油缶を利用した焚き火ですね。
八名 俺らはそこに入りたいんだけど、健さんが吹雪の中、足踏みしながら寒さをこらえている。「スタッフが外で働いてるのに、俺たちだけで焚き火なんかにあたれるか」って。
テリー 健さんらしいね。
八名 ところが、向こうは厚着で長靴。俺らは薄い囚人服に、素足でスリッパ。そこを健さんはわかってないんだ(苦笑)。着てるものが全然違うのに、同じ零下20度の吹雪の中に立たされるんだから。
テリー ハハハ、僕らはメイキング映像なんかでそういう健さんを見ると、「さすがは高倉健だなァ」と感心しちゃいますけどね。
八名 俺らにとってはいい迷惑(笑)。でも、どこに行っても絶対に背中に高倉健を背負ってるのは偉いよね。よくあれだけ我慢できるな、と。俺らなんかあんなこと、疲れてできないからね。