本好きリビドー(119) (1/2ページ)

週刊実話

◎快楽の1冊
『水戸黄門 天下の副編集長』 月村了衛 徳間書店 1600円(本体価格)

 月村了衛は異なるジャンル、あるいは違う雰囲気の小説をミックスして書くのが得意な作家だ。2010年から始まった『機龍警察』シリーズは、近未来SFと警察小説を合体させたものとして名高い。
 大藪春彦賞を得た『コルトM1851残月』は時代小説だったが、刀剣と現代的な拳銃を戦わせ、アクション・シーンを作り上げたところが、まことに斬新であった。2月に刊行された『ガンルージュ』は、韓国工作員と元公安警察のシングルマザーが闘うという、これまた新しい発想による小説になっている。女性バディものとして楽しめるし、所々ユーモアもちりばめられている。
 さて本書『水戸黄門 天下の副編集長』は7月刊である。水戸黄門と言えばもちろんあまりに有名な長寿番組が連想される。それでいて“副編集長”というそぐわない呼び名がタイトルに入っているのだから、読む前から得意のミックスを期待しないわけにはいかない。連作短篇集だ。
 基本的にはテレビドラマのレギュラー・メンバーと重なるところが多いけれど、当然、全く同じ世界を描いているわけではない。つまりはパロディー短篇集なのだ。
 設定は次の通りである。水戸藩邸内に彰考館という建物がある。前藩主の徳川光圀公が建てた、言わば編集局だ。目的は『国史』の編纂である。様々な人物に原稿を依頼しているのだが、締切を全く守らない者もいる。遅筆である。業を煮やした御老公は、覚さん、介さん、それと敏腕編集者であるお吟を連れ、各地に行っては遅筆の者に強烈な催促をすることに決めたのだった。
 作者の発想力が光る1冊だ。大悪党を懲らしめるのではなく、まことにユーモア満載の道中なのだ。中には落語のような作品もある。それでいてアクションも楽しめるところがいい。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 夏の休暇を利用して、全国各地のパワースポットへと足を運ぶ女子は決して少なくない。その目的はさまざまだが、女性の場合は大半が「恋愛成就」、つまり縁結び、次いで「子宝祈願」などだろう。
 一方、男がパワースポットへ詣でるという話は、あまり聞かない。

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