イチロー メジャー通算3000本安打の原点 〜スポーツジャーナリスト・友成那智〜 (3/4ページ)
それ以降、イチローは今日に至るまでバットの基本形を変えていない。
では、ほかにイチローのバットには、どんな特徴があるのだろう?
筆者は2008年に取材でミズノの養老工場を訪れた際、製作者の久保田五十一さんにそのことを尋ねたことがある。
久保田さんから頂いた答えを要約すると、以下のようになる。
●スイートエリア(打芯)が狭い。
●スイートエリアが先端の方にある。
●細いので内角の速球に差し込まれると折れやすくなる。
●アオダモで作っているのでバットのしなりが大きい。
このような特徴のあるバットは、狭いスイートエリアで打球を捉えると驚くほどいい当たりが出るが、ちょっとでもスイートエリアを外すとボテボテの当たりしか出ないので、素人には使いこなせない。しかし、バットコントロールに長けたイチローは、苦もなく使いこなし、大きな武器にしていった。
このように、同じ形状のバットを使い続けているイチローだが、重量や木の種類は必要に応じて変えている。特にメジャーに移った際は、外国人投手の速いボールに対応するため900〜915グラムあったバットの重量を880〜900グラムに下げ、使用木もアオダモからホワイトアッシュに変えた。
さらにバットの色もナチュラルカラーから黒にしている。
しかし、ホワイトアッシュを使ったのは1年だけで、翌'02年にはアオダモに戻している。
再度、ホワイトアッシュに変更したのは'15年のことだ。これはイチローの好みで行った変更ではなく、アオダモの乱伐で資源が枯渇したのが原因だった。それでもアオダモへの愛着は断ちがたいようで、バットのストックがあったため打撃練習では引き続きアオダモを使って、外野席にライナー性の大飛球を放り込んでいる。
最後にイチローとピート・ローズとの比較を少し行って、この記事を締めくくりたい。
イチローとローズはどちらも球史に残る安打製造機だ。そして、ともにミズノの久保田五十一さんが製作したバットを使用していたことで知られるが、使用しているバットは天と地ほども違いがあった。
ローズが使っていたバットはタイ・カッブ・モデルで、グリップが太く、スイートエリアも広かった。