市民生活を一変させたインドネシアの「IT革命」 (2/2ページ)

FUTURUS

そういう側面もあるから、陸運業界がどんなに反発しようと政府は新興配車サービスの「完全排除」には乗り出さない。雇用が増える分には、やはり喜ばしいことだからだ。

■ 新規参入者にも大きな可能性

もともとこの国の人々は、「スーパーマーケット」よりも「商店街」に頼る傾向がある。

要するに大企業よりも個人経営の零細業者のほうが信用されるということだ。「情報」よりも「伝聞」が説得力を持つ国では、零細業者の集合体が市場で幅を利かす傾向がある。するとそこに、新規事業者が参入する余地が生まれる。

たとえば『tukangbersih.com』は、現在急成長している清掃サービス業者である。インドネシアの富裕層は昔からメイドを雇う習慣があったが、最近ではメイドをやめて清掃サービスと契約するケースが相次いでいるという。

メイドという職業の危険性については、以前から議論されていた。国外ではインドネシア人メイドが雇い主に虐待されていたということがあったし、またメイド自身が怠慢や不正をやらかして問題になる例もある。

ならば、スマホアプリでいつでも呼び出せる清掃業者に頼もうと考えるのは、人情というものだ。

■ 日本を追い抜く日は来るか?

つまり、スマホの普及から始まったスタートアップブームは、この国の生活様式すらも変革しているということだ。

もしこうした現象が、農村部にも波及したら?

インドネシアの農業は近代化が遅れていると言われているが、それでも高度な技術を持った農家も存在する。先日、インドネシアの人気トーク番組『Hitam Putih』にバナナ農家のラシオ・シャイフディン氏が出演していた。この人物はイタリアに農業講師として招聘されたほどなのだが、こうした農家が「スマホアプリの可能性」に気づいていたとしたらどうだろうか?

いや、それ以前にインドネシア政府が「農村部でeコマース事業立ち上げを」と呼びかけ、すでにアプリ開発を行っている。この国の飲み込みの早さを侮ってはいけない。農協のネットワークのみに頼れなくなった日本の農家が頭を抱えている時、インドネシアの農家はすでにスマホを手にしている。近い将来、農協がインドネシア人生産者を流通分野の講師として呼ぶ日が来るかもしれない。

それだけ、この国は急速な「進化」を遂げているということだ。

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