長谷川豊の”いつもの炎上”を芸としてどう咀嚼するか|やまもといちろうコラム (1/2ページ)

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Photo by Pixabay
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 山本一郎(やまもといちろう)です。

 先日、鳴かず飛ばずの投資先に「もう無理だと思うから、おたくの株売るよ」と通達しにいったら、公衆の面前で社長(48歳・男性)に号泣され、なんかホモカップルの修羅場みたいになりました。仕事がうまくいかないなんて普通にあることじゃん…。

 ところで、先日BLOGOSで長谷川豊さんが派手に炎上していました。ネタがネタだけに、定番炎上芸がだんだん先細りになりつつあった長谷川さんもテーマの高カロリーに引っ張られて、いろいろ反響があったようです。

 本丸の長谷川さんの記事はくだらないし読む価値無いのでリンクは貼りませんが、この件で反応した人たちの議論が面白いので陳列しておきます。やはり幾つになっても火事場見物は楽しいものです。

 私自身も、長谷川さんの意見は「理解はするけど賛同はしない」です。

「自堕落な生活で人工透析やってる連中なんか全員殺せ」 長谷川豊ブログ・発言が物議
長谷川豊さんの「自業自得の人工透析患者」論と「自分はつねにアリの側である」と信じられる人
透析患者は殺せと言う長谷川豊の暴論にデータに基づいて反論してみる

 人工透析に関する議論は奥深いものであって、人工透析患者が医療費をかなり食ってしまう結果、もしも財政破綻でもして保険医療が止まるような社会保障の停止が行われたら真っ先に亡くなってしまう一群が人工透析患者も含まれる、というお話を以前「みんなの介護」でも書きました。

いまこそ歴史に学ぶとき。財源不足で社会保障が止まったら…まず犠牲になるのは、やはり公的補助の多い弱者から

 ただ、長谷川さんが書くように「だから人工透析患者は死ね」という話と、「適正な医療保険の使われ方を模索するべき」という話とは別の議論です。自堕落が健康を害したので、ほかの人の払っている医療保険を使うのはけしからん、ただでさえ財源がないのに、という議論に観念的に同意する人はそれなりの割合いて、今回の長谷川さんの暴論にも少なくない人が同意している現状もあります。

 一方で、長谷川さんの意見というのは一種の優生学であり、人工透析を受けなければならないような慢性疾患を患っておられる方だけでなく、障害者、一定の課題を抱えた人々などもまた、そのような人間に医療費を使うなという議論に容易に発展していってしまいます。先天的であれ後天的であれ、またその事情がやむに得ない事情であったとしても、結果として健常な人よりも医療費を使ってしまう人たちに対するヘイトになるからです。

 長谷川さんの意見を政策にまで煮詰めた結果がナチスドイツの悪しき政策として語り継がれるT4作戦になります。

T4作戦

「医療政策面では課題はあるけれど、財政的に考えて患者全員を救うことができないので、優先順位をつけざるを得なくなる」ことと、「特定の症例を救うのに多額の費用が掛かるからその症例に対する保険適用をやめる」こととは、そもそも議論の方向性が違うわけです。

 やむを得ず、自己負担比率を上ざるを得なくなることは議論としてあり得ても、特定の病気の人、今回であれば人工透析の人を選択的に死ねと言ってしまうと、次々と死なせるべき病気が増えていくことになるわけです。それも、なぜその病気の人が死ななければならないかを勘案したとき、かかる医療費が高いということ以外の根拠が特にないので、難病であるほど、治療にお金がかかるほど、長谷川豊さんに「死ね」と言われることでしょう。

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