遠くが見えやすく、近くが見えにくくなる?宇宙飛行士特有の目の病気 (2/3ページ)
VIIPとはどんな病気なのか
脈絡膜が厚くなる現象は、宇宙に長く滞在するとしだいにおさまってきます。次におこるのは、視神経の変化だと考えられています。
具体的には、体液シフトで目のほうにも体液が集まり、視神経の束が眼球の後ろの壁を押すために、壁が前に移動します。すると本来は丸い眼球の後ろの部分が扁平になってしまい、前に出てきてしまうのです。
こうした頭の中の圧力変化による症状を、NASAはVIIP(Visual impairment intracranial pressure syndrome:視覚障害頭蓋内圧症候群)と名づけました。
VIIPは宇宙でしかおこらない?
VIIPは、宇宙でしか発症しない病気なのでしょうか?
実は、地球上にもVIIPに似た症状はあります。最も近いのは特発性頭蓋内圧亢進症(IIH)です。
IIHを発症すると、頭の中の圧力が上がり、VIIPのように視力の低下がおきます。また、「うっ血乳頭」という症状は、VIIPのように視神経が腫れ上がります。
けれども、どちらもVIIPと全く同じ症状ではありません。
たとえばIIHの場合、VIIPにはない吐き気やめまいなどのさまざまな症状がみられます。また、うっ血乳頭には薬物治療が有効ですが、VIIPには効果がありません。
宇宙の現場でしかわからないこと
VIIPが発症する原因は、未だ解明されていません。
体液シフトについては、地上で被験者の頭を少し下げて横たわらせた状態でのシミュレーション実験がおこなわれています。
これは一定の成果があるものの、地上の重力が影響していたり、宇宙飛行士と同じように長時間この状態をキープすることが難しかったりするため、宇宙と同じ状況とはいいがたいのが現状です。
また、頭の中の圧力測定についても、各国の研究者たちが試行錯誤しています。
NASAのチームは、宇宙飛行士の頭蓋内に計測機器をインプラントする、という方法を提案しています。