【10月8〜12日】雁から学ぶ”愛と絆”の深め方とは

ANGIE



10月8日~12日頃は第四十九候「鴻雁来る(こうがんきたる)」。つばめが南へ命がけの旅に出たあとは、入れかわるように、遠くシベリアの方から雁といった渡り鳥がやってきます。

昔の人は、雁が渡ってくる頃に吹く北風を「雁渡し(かりわたし)」と呼んでいたとか。また、雁の足に手紙をつけて、都へ届けたという中国の故事に由来する「雁の使い」「雁の文(ふみ)」という言葉もあるそうですよ。私はとりたてて雁が好きなわけではありませんが、家族や仲間と一緒に自由に空を飛ぶ、雁の絆と愛の深さに触れ、感じることがありました。

今回は、この時季に日本にやってくる渡り鳥について知識を深めながら、「愛」と「絆」について考えてみませんか?


七十二候とは?
時間に追われて生きることに疲れたら、ひと休みしませんか? 流れゆく季節の「気配」や「きざし」を感じて、自然とつながりましょう。自然はすべての人に贈られた「宝物」。季節を感じる暮らしは、あなたの心を癒し、元気にしてくれるでしょう。

季節は「春夏秋冬」の4つだけではありません。日本には旧暦で72もの豊かな季節があります。およそ15日ごとに「立夏(りっか)」「小満(しょうまん)」と、季節の名前がつけられた「二十四節気」。それをさらに5日ごとに区切ったのが「七十二候」です。

「蛙始めて鳴く(かえるはじめてなく)」「蚯蚓出ずる(みみずいずる)」……七十二候の呼び名は、まるでひと言で書かれた日記のよう。そこに込められた思いに耳を澄ませてみると、聴こえてくるさまざまな声がありますよ。

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雁は「愛」と「絆」の深い鳥


雁は夫婦や親子の絆が深い、愛情深い鳥。親鳥は子どものそばに付き添い、渡りのコース、飛び方、危険をのがれて生きぬくための方法をひとつひとつ教えていくそうです。

雁はどんなときも家族と一緒だから、群れで行動します。そのため、渡りの季節である春に、翼をケガしたり、体調の悪い仲間がいると、その雁が元気になるまで、みんなで待つと知り驚きました。ましてやつがいが亡くなると、悲しみに打ちひしがれて、しばらくそばを離れないこともあるそうです。私たち人間と一緒ですね。

そういえば昔、ある女流作家が恋愛にまつわるエッセイで、翼を持たない鳥(地上で生活する鳥)は、次々とつがいを変えるけれど、自由に空を飛ぶことができる渡り鳥は、決してつがいを変えることはない。渡り鳥のように一緒にいて自由を感じることができれば、愛は永遠に続くかもしれない、と書いていました。

皆さんは、パートナーに窮屈な思いをさせていないでしょうか? すこし振り返ってみるのもいいかもしれません。


あなたの結婚の目的は?


雁をはじめとする渡り鳥の旅の目的は、「子育て」と「心地よく生きる」。私たち人間も、パートナーと同じ目的を持って生活することができれば、結婚生活において、お互い息苦しくなることもなく、自由な気持ちで人生を歩んでいけるのではないでしょうか。

私はブライダルの講師、プロデュース、司会等の仕事で、これまで1000件を超える結婚式に立ち会ってきました。結婚への思い、スタイルもさまざまです。「なぜ結婚したいのですか?」「結婚の目的は?」「結婚後にのぞむ生活は?」とたずねたら、答えは人それぞれでしょう。「お互いの才能を社会で発揮しながら、豊かな生活をおくりたい」「つつましやかな生活でかまわないから、家族で過ごせる時間を何より大切にしたい」「思い立ったら、自由にどこでも飛んでいける結婚生活」などなど。「ただ好きだからずっと一緒にいたい」という答えは、結婚の目的にはなりません

結婚はゴールではなく、スタートです。「好き」という甘い気持ちも、いつしか現実の生活の中で、消えてしまったり、形を変えていくものです。「好き」という気持ちの先にあるもの、結婚の目的をふたりで見つめ、共有することができれば、結婚しても不安から縛り合うことなく、お互いを信頼、尊重し、一緒に生きていくことができるのではないかと思いました。

パートナーがいるという方はぜひ、結婚前に、お互いの夢、結婚の目的について話し合ってみてくださいね。


いにしえの人のやさしいまなざし


渡り鳥の雁は情の深い鳥のため、いにしえより愛されてきました。ところで、雁にまつわる言い伝えがあるのはご存知ですか?

渡り鳥である雁は、月の夜、木の枝をくわえて北国から渡ってきます。飛びつかれると、波間に枝を浮かべ疲れた体をやすめ、津軽の浜へ。たどり着くと枝を浜辺に落として、さらに南の空へと飛んでいきます。そうして日本で冬を過ごした雁は、早春の頃、ふたたび津軽へ戻り、自分の枝をひろって今度は北国へ。雁が飛び去ったあとには、生きて帰ることができなかった雁の数だけ枝が残るのです。

浜の人はその枝を集めて風呂を焚き、亡くなった雁たちの供養をしたそうです。中には残された枝に、亡くなったつがいを思い、涙する雁もいたのでしょうか。亡くなった雁を偲ぶ「雁供養」など、いにしえの人はあらゆるものを愛あふれるまなざしで見つめていたのですね。そんなまなざしこそが、人と人、あらゆるものとの「絆」を深めてくれるのではないでしょうか。



今日はこの時季、遠くシベリアの方から日本にやってくる渡り鳥、雁のお話をしました。とりたてて興味がなかった鳥も、その習性や、一生を知ると、ぐっと親近感がわきませんか?

私たちが暮らす地上だけでなく、空にも、海にも、愛がありますね。パートナーと同じ夢や目的を共有することで生まれる信頼と安心感。生きとし生けるものはもちろん、亡くなった人、役に立たなくなったものさえも、やさしいまなざしで見つめることができたら、愛する心と一緒に、愛と絆もより深くなるでしょう。

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【参考】『二十四節気と七十二候の季節手帖』山下景子/成美堂出版

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