病魔と闘う荒ぶる役者たちの不屈秘話 「第3回・渡瀬恒彦」(1)キャリアの段差をぶち壊せ! (2/2ページ)
俺は柔道二段だから渡瀬さんは体を打って息が詰まる状態になったんだけど、それでも怒らずに『芝居のことなんだから気にするな』と言ってくれる人なんだよ」
渡瀬が東映の中で存在感を発揮し、成瀬らが「ピラニア軍団」を結成するに至ったのが、あの傑作「仁義なき戦い」(73年)である。渡瀬は山守組の若頭・坂井鉄也(松方弘樹)に反目する有田俊雄を演じている。シャブの売買を巡って有田が坂井に叱責される場面では、役者としての渡瀬自身を重ねたセリフを吐く。
〈やれんのう! わいらのやること、いちいちケチつけられたんじゃよう!〉
筆者は13年、渡瀬から当時のポジションを聞いたことがある。
「撮影所はキャリアの段差が何層にもなっています。第一に菅原文太さんや成田三樹夫さんのグループ。その下に松方弘樹さんのグループ。さらにその下に僕のグループがあって、何とかのし上がりたいと思っている連中ばかり」
後述するが、格下を見下したり、格上に媚びを売るということが皆無な役者は、渡瀬をおいてほかにない。これに大学時代は空手二段という腕前も手伝い、たびたび「芸能界ケンカ最強説」が流れる。
成瀬は、そんな伝説を裏づける現場に遭遇した。
「文太さんの酒グセの悪さは有名で、これに怒った渡瀬さんが『お前、帰れ!』と一喝。さらに『ただし、先輩なんだから金は置いてけよ』と財布を出させていたね」
東映名物の“波しぶき”にも似た荒々しさである。