人間の遺体は、宇宙に新たなる生命体を誕生させるきっかけになるのか? (2/5ページ)
特に、問題の移動が火星のような近い場所であるのなら、人体内にある細菌の芽胞は間違いなく生存します」とキング氏は説明する。
「また、芽胞を作らない細菌でも生存しうるでしょう。デイノコッカス・ラディオデュランスを念頭に置いているのですが、これは乾燥や高レベルの電離放射線を生き抜くことができます」
人間の遺体が媒体になるための三つの要素
遺体が他の惑星まで細菌を送り届ける宅急便になるかどうかは、大きく三つの要素があるようだ。すなわち、遺体の容器・保管環境・移動時間 である。
第一に、もし遺体が投棄されたのなら運の尽きだ。宇宙空間を漂う遺体を想像しているのだとすれば、それはすぐさまどこかの惑星の重力に引かれて、大気圏で燃えて尽きてしまう。したがって、遺体は宇宙船のような容器に収まっていなければならないし、それでも大気圏突入は非常に破壊的である。しかも、細菌が新天地で広まるには、着陸かそのあとで宇宙船が開かなければならない。
第二に、遺体の保管についても考えなければならない。氷点下より少し高い、水分を液体のままで保てる温度なら理想的だ。細菌が巨大な有機物を分解する速さには限界がある。線虫や甲虫など、分解を助ける動物がいなければ、人体はそれこそ数千年という細菌が無数の世代を繋げるだけの燃料を提供することだろう。
しかし、こうした条件は必要条件ではないかもしれない。面白いことに、細菌の培養を長期間保存する際は、基本的にフリーズドライにするのである。
保存したい培養を凍らせ、さらに乾燥させる。こうしてペレットとなったものを運んだら、これに再び水分を与え、成長させる。宇宙が天然のフリーズドライ装置であることを考えれば、細菌の保存にそれほど悪い環境ではないとは想像に難くない。