人間の遺体は、宇宙に新たなる生命体を誕生させるきっかけになるのか? (3/5ページ)

だが何よりも最大の要因は第三の要素、遺体の移動時間かもしれない。
遺体が通常の人工衛星の速度で移動すると想定するなら、太陽系内は細菌が生存する範囲内にあることは確かだ。しかし、他の恒星系にたどり着くまでに要するような数百万年というタイムスケールで考えるのならば、放射線が足かせとなる。
遺体が宇宙を漂う時間が長くなるほど、宇宙線への被曝量も増える。DNAやRNAの突然変異を生み出すには十分だろう。こうした突然変異をこれが発生する頻度と同じペースで修復できない限り、生存の可能性は疑わしくなってくる。
放射線に対する保護がほとんどない状態で、百万年という条件を考えるのなら、細菌が生存する可能性はかなり低い。だが、不可能とは言わないとキング氏は話す。人体内に無数に存在する細菌のたった1個が生き残ればいいのであれば、だが。

遺体の細菌すべてが死んでしまっていても、新たな生命を誕生させる可能性はある
では、遺体が無事目的地に到達したとして、もし細菌がすべて死んでしまっていた場合はどうだろうか。すでに命はないが、アミノ酸、脂質、たんぱく質、炭水化物がたっぷり残っており、これが全く新しい命を誕生させることはあるのだろうか?
ノーベル賞を受賞したハーバード・メディカルスクールの遺伝学者ジャック・ショスタク氏とグラスゴー大学で生命の起源を研究する化学者リー・クローニン氏は、これに同意する。ただし、条件は完璧なものでなければならない。
「環境条件が生命の誕生に完璧にマッチしたものであれば、腐敗する宇宙飛行士から放出された分子が新しい生命の起源を後押ししてくれる可能性はあります」とショスタク氏。